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第4回 St. Pierres、サウジアラビアへ

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フランチャイズへの夢

1990年には、St.Pierresは国内に15店舗を構える企業に成長していました。この頃に、フランチャイズビジネスに興味を持ち、私たち兄弟はこれについて学びたいと思い始めました。そこで、フロリダのマイアミで開催されるフランチャイズの国際会議に参加してみることにしました。

この会議で私たちは、サンドイッチでおなじみのSUBWAYの創業者であるFred Deluca氏に出会います。当時すでに3000店舗を超えるフランチャイズビジネスを展開していた彼は、私たちがこれまで出会った中で最も感銘を受けた人物と言えるでしょう。ご存知のとおりSUBWAYは、今日では世界中に3万店舗を抱える大企業です。残念なことに、Fred Deluca氏は、昨年白血病で亡くなられましたが、St.Pierresにとって常に大きな学びと刺激を与え続けてくれた人物でした。

そしてマイアミでは、もう一人別の人物とも出会いました。ニューヨーク出身のBob Kushellという、フランチャイズビジネスのコンサルタントです。彼は、サウジアラビアにある魚屋のチェーン店のコンサルタントをしており、私たちに「このチェーン店がSt.Pierresとよく似たビジネスを展開しているので紹介するよ」と言ってきました。当時のニュージーランドには、インターネット、メールなど無く、国際Faxでやりとりする時代でしたので、このサウジアラビアの会社とFaxで何度も連絡をとりあいました。こうしてお互いが、どんな人物でどのような企業を経営しているか分かってきた頃、このサウジアラビアの会社の社長、Dr.Nasser氏が、ニュージーランドに視察に来ることになりました。

Dr.Nasser氏がニュージーランドに到着して早々、私たちは、彼をオークランドのSt. Luke’sモールにある店舗に連れて行きました。車を降り、モールに入って、私たちの店舗に向かって一緒に歩きました。遠目からSt.Pierresの看板が見えてきた時、彼は、その店をひと目見るやいなや、いきなり「この店をサウジアラビアにオープンさせたい」と言ったのです。

新天地でのビジネス展開

この一言で、これまで想像もしていなかった壮大なプロジェクトが展開することになりました。まず、私たちの取引先であるシーフードホールセラーや水産加工業者に、ホタテ、ムール貝、スモークサーモンなどのニュージーランド産のシーフードを、アラビア語のラベルが貼られたパッケージに梱包してもらえるよう手配しました。そして、これらの商品をディスプレーするための棚や看板なども、こちらの業者に依頼し作ってもらうことにしました。私たちは、商品を仕入れ、お客様に販売するリテイラーであり、このような一連の作業はすべて初めての経験でした。当然、教えてくれ人は誰もおらず、全てが試行錯誤でした。今思い返しても非常に大変な作業だったと思います。

なにはともあれ、ニュージーランドからサウジアラビアに向けて、最初のコンテナを送り出す段階までこぎつけました。先方の事情で最初のコンテナは、航空便で空輸されました。しかしサウジアラビアの空港の税関での通関に非常に時間がかかり、私たちのコンテナはそのまま40度の熱帯に放置されました。結局、冷凍品は溶けてしまい、全ての商品が使い物にならない状況となりました。この経験以降、ニュージーランドからのコンテナは、全て船便で送ることにしました。

04-02 04-03 1991年には、私自身もサウジアラビアに駐在し、リヤド、ダナン、ジェッダに7つの新店舗をオープンさせました。「St. Pierres NZ」は、日本のデパートのような大型店舗の中に小売店として出店し、そこでニュージーランドから直輸入されたシーフードを販売しました。

 

サウジアラビアでのビジネスは、予想以上に上手くいきました。各国大使館の職員やイギリス、アメリカ、日本の外資系の大企業に務める駐在員とその家族たちから人気となり、固定客となってくれました。ただ、現地のサウジアラビア人にとっては、私たちの取り扱う商品はあまり馴染みがなく、それほど人気となりませんでした。彼らにとって魚は、切り身よりも一匹まるごと、そして生ではなく、よく調理されたものという考えがあったようです。また、店舗の従業員へのトレーニングも大変難しいものでした。St. Pierre’s が掲げる「最高のサービスを提供する」コンセプトがなかなか理解されませんでした。

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残念ながら1991年、イラクがクウェートを侵略が始まり、周辺の紅海が石油で汚染されてしまいました。これにより現地のシーフードビジネスは大打撃を受け、このサウジアラビアの会社とのビジネスリレーションシップは1993年に終わってしまいました。でも、私たちはこの経験から非常に多くのことを学ぶことができたと思っています。加えて、このサウジアラビアの会社でSt.Pierre’sの担当として働いていた優秀な人材の一人Sureshが、その後ニュージーランドへと移住しSt.Pierresに入社しました。彼は、現在のSt.Pierre’s会社組織を形成してくれることなりました。彼は、ロジスティックス、リテール及びナショナルオペレーション、購買分野での知識と経験が豊富で、現在でもSt.Pierresのなくてはならない逸材として会社に貢献し続けてくれています。

Nick Katsoulis
St. Pierre’s International Ltd.共同オーナー兼経営者。
1984年から兄弟と共にビジネスを始める。
ビジネスで道を極めることを目指し楽しむ。
 
https://facebook.com/StPierresSushi/
stpierres.co.nz