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第11回 I ♥ Sushiに込めたメッセージ

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I ♥ SUSHI

日本とニュージーランドの震災を超えて

第9回のコラムでも触れましたが、2011年は日本とニュージーランド両国にとって、試練の一年となりました。2月22日にニュージーランドのカンタベリー地区を大地震が襲い、多くの尊い命が失われました。日本からも支援や救助の手が差し伸べられ、初期の混乱が少し落ち着いたように見えたころ、今度は3月11日に東日本大震災が発生したのです。連日のニュースで見る日本の様子は、見るに耐えない辛いものでした。私自身も宮城県在住の友人を亡くすという悲しい経験をしました。

日本と深い関わりをもちながらビジネスをしている者としても、この時期は非常に大変な時期となりました。クライストチャーチの混乱に加えて、日本で発生した非常事態もまた、私たちのビジネスに大きな影響を与えました。

日本の食品に対する風評

東日本大震災のあと、日本製食材の安全性に関し世界中から様々な疑問や批判の声が上がりました。これはニュージーランドでも同じで、メディアは一斉にその危険性やリスクについて報道し始めました。私たちの取引先からは、電力使用規制や物流の混乱で関東地方の工場が操業できない、安全性を証明するサティフィケートの取得が必要になり、ニュージーランドでの通関に通常よりも時間がかかるのではないかという連絡を連日受けました。知人にも、食材調達の方法や取引先を変更した方が良いというアドバイスをされたり、「日本製の食材を使っていない」と謳う日本食レストランもありました。

また、日本製の食材の安全性について多数のお客様からの店頭及びメールや電話での問い合わせがありました。「私たちの取引先は、安全性の証明に全力で取り組んでいる。ニュージーランドで検疫で検査が確実に行われているので安心してほしい。」と私たちは伝えました。

この状況で、私は居ても立ってもいられない思いにかられました。知人の言うように食材の調達方法や取引先を変更するのか?時間と手間がかかっても長年のパートナーである取引先とビジネスを続けるのか?決断を迫られました。最終的に「ニュージランドを代表する日本食のチェーンストアオペレーターとして、率先してこの状況をなんとか改善できるように行動するべきだ。長年のパートナーである取引先を支援したい。お客様も従業員もついてきてくれる。なにも恐れるものはない。」と言う気持ちが勝ちました。批判も有りましたが、私たちは正しい事をしたいと思いました。そして「素晴らしい『日本食』という文化について、ニュージーランド国内だけでもなんとかポジティブなメッセージを広げたい…」、「私たちSt. Pierre’sだけの利益を考えるだけでなく、日本に関連するビジネス全体を応援したい。」と思ったのです。

そこで私は、有名は「I♥New York」にもじって、「I♥Sushi」のキャンペーンを、ニュージーランド各地で展開しようと思い立ちました。ユーモアを交えたやり方で、日本を少しでも応援できればと考えたのです。 

会社をあげての日本応援キャンペーン

11-03 まず私たちは、ニュージーランド各地のビルボードに「I♥Sushi」のメッセージを印刷し、大々的にこのメッセージを伝え始めることにしました。それと同時に、「I♥Sushi」のステッカーを大量に作成し、St.PIerresの店舗でお客様に無料で配布し始めました。当時、スシは、まだハンバーガーやピザほど人気がある食べ物ではありませんでした。しかし、この「I♥Sushi」のステッカーは大人気となり、乗用車やトラック、スケートボードやスーツケースなど、色々なところでこのステッカーを見かけるようになりました。この試練の時期に、お客様も私たちのメッセージに賛同してくれたことは、今でも大変嬉しく思っています。マーケティングディレクターとしても、大変良い仕事が出来たのではないかと思います。

11-04震災から6年たった今でも、私たちはこの「I ♥ Sushi」のステッカーをお客様に無料で配り、このメッセージを発信し続けています。

スシは、見た目が魅力的なだけでなくヘルシーで栄養価が高い非常に優れた食品です。移民の多いニュージーランドでは世界各国の料理が食べられますが、中でもやはり日本は、本当に素晴らしい食文化を持っている国だと思います。

私たちSt.Pierresがニュージーランドで始めたスシは、確かに日本のスシとは少し違っています。「握り」スタイルが主流の日本のスシとは違い、こちらでは今でも「巻き」のスタイル、しかも人気の具材は照り焼きチキン…といった具合です。でも、スシの人気はこれからも高まり続け、近い将来ニュージーランド人も、日本のより伝統的なスシのスタイルに魅了される日が来ると思います。

「I♥Sushi」のメッセージは、すでに文化としてニュージーランドに定着しました。「I♥Natto(納豆)」のメッセージがニュージーランドに広がる日が来るのかどうか、それは私にも定かではありませんが…

11-02

Nick Katsoulis
St. Pierre’s International Ltd.共同オーナー兼経営者。
1984年から兄弟と共にビジネスを始める。
ビジネスで道を極めることを目指し楽しむ。
 
https://facebook.com/StPierresSushi/
stpierres.co.nz