重なった偶然
前回のコラムでご紹介したとおり、St. Pierre’s のオークランド進出に伴い、私自身も1986年にはウェリントンからオークランドに引っ越していました。そしてこのオークランド1号店が苦戦を強いられていたちょうどその頃、このショッピングモールから目と鼻の先にある場所で営業をしていたとある店舗に目をつけたのです。
一軒の古い鶏肉専門店
そこはDowntown Shopping Centreと呼ばれる老舗のショッピングモールでした。クイーンストリートとキーストリートの交差点、現在のブリトーマート駅の向かいにあったこのビルは、残念ながらダウンタウン地区の再開発のため2016年6月に取り壊されてしまいました。現在も新しいビルの建設が続いていますが、ここは今でも私たちにとって、オークランドの中で特に思い入れの強い場所の一つです。
Downtown Shopping Centre
このショッピングモールは、オークランドのビジネス街の中心地にあり、ランチタイムや仕事が終わる時間帯になると、いつも買い物をする人でごった返していました。 このショッピングモールの中に、当時、一軒の古い鶏肉専門店がありました。精肉店と果物屋に挟まれたロケーションで、この店のオーナー夫婦はかなりの高齢に見えました。
「そろそろリタイヤを考えていてもおかしくないような夫婦だ…」と思った私は、それを確認してみようと思い立ちました。そこで彼らに電話をかけ、名前を名乗らずに「お店を売ることは考えていませんか?」と聞いてみることにしたのです。そのオーナーは「売る気は全くない。」と即答しました。2ヶ月後、再び挑戦しましたが、答えはやはり「No.」でした。それでも諦めずに、4ヶ月後にも電話をかけてみました。そのオーナーは「断固として売るつもりはない。いい加減諦めてくれ。」と言いました。こうしている間にも、私たちのオークランド一号店はずっと苦戦を続けていました。
そんなある日、青天の霹靂のごとく、一本の電話がかかってきました。電話の主はこの鶏肉店のオーナーで、なんと私に「お店を売ることにしたよ。」と言うのです。私は、あまりの驚きと喜びに冷静さを失い、その足でその鶏肉店へ向かってしまいました。そして、私の兄弟へこの事を伝えるために電話をしましたが、「悪い冗談はよせ。」と全くもって信じてもらえませんでした。
携帯電話もない時代、彼がどのようにして私が電話の主であったことを知り、私の電話番号を入手できたのか、今でも不思議なのですが、なにがともあれ私たちはこのお店を手に入れることになりました。
店の購入価格は予想以上に高額でしたが、価格に充分見合う価値のあるものでした。オープン初日、このオークランド第2号店は、オークランド1号店の一週間分以上の売上を上げました。そして、このオークランド第2号店の成功こそが、その後1990年代に私たちが寿司ビジネスを展開していくための重要な土台となるのです。
- Nick Katsoulis
- St. Pierre’s International Ltd.共同オーナー兼経営者。
- 1984年から兄弟と共にビジネスを始める。
- ビジネスで道を極めることを目指し楽しむ。
- https://facebook.com/StPierresSushi/
- stpierres.co.nz