グローバルブランドへの挑戦

創業以来、St.Pierresはショッピングモール内に店舗を展開する戦略でビジネスを拡大してきました。ショッピングモールで買い物をしたりランチを食べたりするお客様がターゲットだった訳です。しかし、より多くの人々に私たちの美味しいスシを提供していくためには、市場の拡大、新しい顧客層の開拓が必要になります。これまでのようにショッピングモールに立ち寄る人に買ってもらうだけでなく、”自宅の近くでもっと気軽にスシが食べれてもらえるようなお店にしたい。週末に家族みんなでランチやディナーを食べに行けるような場所を提供したい。” そのためには、従来の店舗展開の戦略を変えていく必要がありました。

それまでのショッピングモール内の店舗とは異なるスタイルとして、はじめてロードサイドスタイルの店舗をオープンすることにしたのは2005年のことでした。この新しいスタイルの    店舗を展開するにあたり、最初に選んだ場所はオークランド空港のすぐ近くのロケーションでした。空港やその周辺で働くビジネスパーソンや、空港へ送り迎えする人、旅行者たちが行き交う交通量の多い場所を選びました。そしてそこは、マクドナルド、SUBWAYが隣に立ち並んでいるという立地でもありました。

これは私たちにとって、まさに「試験」と言うにふさわしい経験だったと思います。これまで培ってきたSt.Pierresのブランドが、どれほどオークランドの人々に浸透しているのか、そしてどれほど顧客の心を掴んでいるのか。。。 マクドナルドやSUBWAYといった世界的なブランドと隣接した土俵で、どこまで私たちが勝負できるのか、その回答と結果はお客様にしか出せません。

St.Pierre’s Auckland Airport店、緊張のオープニングの日です。スシ試食やラジオ告知の成果もあり、初日は上々な結果を納めました。嬉しいことに、この店はその後も順調に売上を伸ばしSt.Pierresの黄色いブランドロゴマークが、オークランドの人々の心にしっかり根付いている事を予感させるものでした。この成功を受けて、私たちはこれまでの「ショッピングモールや街の中心地の一角にテナントとして入居する」という従来の店舗展開を、「ロードサイドスタイル」の店舗展開へと、戦略を変更するべきだと思いました。

NZ初のドライブスルーすし店！？

日本で目にした様々なチェーンストアも、私たち兄弟に大きなインスピレーションを与えてくれました。　四国を訪れた際に、「セブンイレブン」や「ローソン」といったコンビニエンスストアや「マクドナルド」、「吉野家」、「くら寿司」や「スシロー」などといったレストラチェーン店が、地元で大きな成功を収めているのを目の当たりにしたのです。これらの店舗は全て大きな駐車場を備えたロードサイドスタイルの店舗でした。それらの店舗は、いつも地元の人で混み合っているようでした。これを見た時Auckland airport店の成功もあり、St.Pierresも街の中心部から離れた郊外の立地で、同様な店舗展開ができるはずだと確信しました。また、このような立地であれば、マクドナルドのようなドライブスルー併設の店舗も可能なのではないかとすら感じました。

四国で見たような郊外の住宅地での店舗展開を始めるにあたり、私たちはオークランド中のロケーションを調べあげ、最終的にオークランドの東側に位置する住宅街に的を絞ることにしました。私たちが新店舗をオープンする場所として選んだのは、市内商業地から電車やバスでアクセスが良い郊外の住宅街、Glen Innesというロケーションでした。この店舗の面する通りは、オークランドによくある典型的な主要道路で、通勤や通学の車でいつも混み合っています。私たちが四国でインスピレーションを得たドライブスルー併設の店舗のも、ここでなら実現可能だと思いました。

結局、土地使用の規制でニュージーランド初のスシのドライブスルー併設店舗の夢は叶わなかったのですが、2013年12月に私たちは、Glen InnesにSushiとBento Bowlを併設したレストランのような店舗をオープンさせました。オープン当日は、恒例のスシ試食、和太鼓のパフォーマンスで大変盛り上がりました。開店以来この店はすぐに成功を収め、今では地元の人々に愛されるレストランとしてすっかり定着しています。これは私たちのビジネスにおいても、「ロケーション選び」と「そのロケーションに合った店舗展開」の重要性を、改めて学ばせてもらった大切な成功例であったと思っています。