St.Pierresにとって必要不可欠なDNA、それは「イノベーション」です。ビジネスを立ち上げてからの1年半は、まさに新しいアイデアを試行錯誤する日々でした。店舗には、健康食品のセクションや青果セクション、グリル、ベーカリーのセクションまで設けました。中でもベーカリーのアイデアは成功したと言えるでしょう。
ベーカリー
ビジネスのトレンドや新しいアイデアをリサーチする為、私たちはアメリカに視察旅行に行きました。そこで、私たちはハワイでベーカリービジネスが成功しているのを目の当たりにし、「ベーカリーは今後ニュージーランドでも人気が出るだろう」という確信を持ちました。
ショッピングモールの中にある私たちの店舗の隣にはアパレル用のマネキンをディスプレイするためのキャビネットがありました。ちょうどその頃、このスペースはほとんど使われておらず、空っぽでした。そこで私たちは、ショッピングモールのマネジメントに掛け合い、このスペースを借りることにし、そこにパンやペーストリーを並べ販売することにしたのです。このベーカリーセクションの計画はすぐに成功を収め、その後20年以上に渡り続けられました。
試食
試食による店頭販売や商品サンプルの配布は、日本のではスーパーマーケット、デパ地下やドラッグストアなどでごく普通に行われていますが、ニュージーランドではそれほど盛んではありません。しかしSt.Pierre’sでは、お客様に商品を試食をしてもらうことを一つの企業文化として大切にしてきました。
1980年代当時、ニュージーランド人はとても保守的で、見慣れないものや食べたことないものを試してみようと思う人はほとんどいませんでした。そのような状況で、お客様に私達が自信を持ってお薦めする商品を実際に試食をしてもらうことは、St.Pierre’sの初期のビジネスにおいては非常に大切なことだったと思います。この最初の店舗でも、スタッフがよく店の外に出てお客様に試食の商品を手渡し、その結果お客様から購入していただくということを多く経験しました。
オークランドへの進出
最初のお店をオープンした翌年の1985年、同じ系列のショッピングモールがオークランドにも建設されることになりました。モールのマネジメントは同じBNZ、建物自体もウェリントンのモールとほぼ同じ規模・デザインとのことでした。モールマネジメントや知人にも「オークランドは人口が多いので、St.Pierre’sもオークランドへ進出すればきっと成功するだろう」と言われました。とはいうものの私たち兄弟はそれまでオークランドへ行ったことが殆どないような状態でしたので、まずは現地に視察に行きました。その結果オークランドには競合他社がいないと感じたので、結局このショッピングモールの店舗を借りることに決め、1986年8月、初のオークランド店舗のオープンに挑戦することになりました。
しかしオープン初日から、私たちは「ビジネスにおけるロケーション選びの大切さ」を身をもって学ぶこととなります。私たちが借りたその店舗のロケーションは、テイクアウトのお店に囲まれたフードコートのような場所でした。お客様はそこへ「食べる」ことを目的として訪れるため、私たちが販売する鮮魚や鮮肉を「買いたい」と思う人はほとんどいませんでした。ランチでお腹が満たされた後すぐに、夕食のメニューを考えて買い物をする人はあまりいませんよね。その時すぐに販売している商品を変更できたら良かったのですが、テナント契約の条件として、この変更は許可されませんでした。加えてその店舗は、フードコートの端で行き止まりの位置だったので、私たち店舗の前を通るお客様もほとんどいないような状況でした。
このオークランド第1号店は本当に大苦戦を強いられました。あらゆる手段を試みましたが、全くもって売上を伸ばすことが出来ませんでした。焦る気持ちを抑えられない私たちはモールの外へ飛び出しクイーンストリートで試食を手渡ししたり、それこそパンダのような被り物を着てお客様を呼び込んでみたりしましたが、どれもうまく行きません。
この色々なことに挑戦した時期は、思い返すと非常に楽しい時期だったとは思いますが、当然ビジネスの運転資金を失っていくばかりでした。お金を失うと人は色々なアイデアを考え、努力を尽くします。これは後日談だから言えることだとは思いますが、赤字が続く時というのは、経営者にとってビジネスについて深く学ぶチャンスなのかも知れません。
- Nick Katsoulis
- St. Pierre’s International Ltd.共同オーナー兼経営者。
- 1984年から兄弟と共にビジネスを始める。
- ビジネスで道を極めることを目指し楽しむ。
- https://facebook.com/StPierresSushi/
- stpierres.co.nz