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第5回 NZでsushiを広める

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St. Pierres、ニューマーケットの店

時代の流れを読む

経営者は時代の流れとともに、常に新しいことに挑戦していかなくてはなりません。しかし一度失敗を経験してしまうと、「同じことにもう一度挑戦してみよう」というチャレンジ精神は、なかなか湧いてこないものです。でも失敗の理由は、アイデアや戦略が間違っていたからなのでしょうか?時には「タイミング」というのも、新しいチャレンジが成功するか失敗に終わるかを決める大きなファクターになり得るのだと思います。新しいアイデアや戦略は良かったけれど、それを実行するタイミングが早すぎた。まだ時代の機が熟していなかった...。
私たちもニュージランドにでスシビジネスを展開するにあたり、この「タイミング」の大切さを経験しました。

St.Pierresは、1984年に初めてスシの販売を始めました。しかしこの時は、残念ながら1年で販売を取りやめることになります。売れなかったのです。この時代、ニュージーランドにはアジアからの移民は多くなく、アジアの文化についても今ほどよく知られていませんでした。
しかし1990年代に入り、状況は変わりました。

90年代初頭、オークランドのダウンタウンにCinCinという名前のレストランがありました。このレストランは、Luis Francというニュージーランドを代表するシェフが経営し、インターナショナルな料理を提供していました。そのメニューの中には「スシ」や「サシミ」といった当時では斬新な料理も並んでいました。海外からの旅行者も多く来ていたためか、「スシ」や「サシミ」はいつも人気のメニューとなっていました。 私たちの良き友人でもあったLuiceは、ことあるごとに「St Pierresでもスシをもう一度販売してみてはどうか?」と言ってきました。前回の失敗の経験から、最初は「無理だよ」と尻込みしていた私たちも、Luiceからの再三の提言により、いつしか「もう一度挑戦してみようか・・・」という気持ちになっていました。そこでまずはニューマーケットの店舗で、スシを販売してみることにしたのです。

たった一人のスシシェフ

当時の一般的なニュージーランド人は保守的で、スシは「奇妙な食べ物」であり、生の魚がのったスシを見ると、たいがい「うへっ!」という反応が返ってくるような時代でした。そこで私たちは、生の魚ではなく、スモークサーモンやボイルしたエビといった調理済みのシーフードや馴染みのあるスモークチキンを使い、それを野菜と一緒に彩り良くスシに巻き、販売してみることにしました。このニューマーケット店での新しいスシは、非常にゆっくりではありましたが、少しずつ、でも確実に顧客の心を掴んでいきました。

St.Pierre’sのスシビジネスへの再挑戦は、この一店舗のモールに来たお客様の目の前でスシを作る、たった一人のスシシェフから始まったのです。ニューマーケット店で販売を始めた”St.Pierre's Sushi”は、しだいに人気商品となっていきました。この成功により、私たちはスシを販売する店を増やすことに決め、オークランドのダウンタウン、ウェリントン、クライストチャーチの3店舗での製造・販売を始めました。これらの3店舗は全てショッピングモールの中にあり、買い物に訪れたお客様は、目の前で巻かれる新鮮なスシを興味深そうに眺めていきました。日本の食文化を代表する「すし」という「アート」が、ニュージーランド人を魅了し始めたのです。それと同時にSt.Pierre’s Sushiの「味」も、ニュージーランド人の心を掴んでいきました。間も無く、私たちの店舗でスシを作るシェフは、一人から二人、二人から三人へと次第に増えていきました。こうしてニュージーランドに、「スシ」と日本の食文化が根付きはじめたのです。

Nick Katsoulis
St. Pierre’s International Ltd.共同オーナー兼経営者。
1984年から兄弟と共にビジネスを始める。
ビジネスで道を極めることを目指し楽しむ。
 
https://facebook.com/StPierresSushi/
stpierres.co.nz