和食ドリーム

第6回のコラムで、東京共同貿易株式会社との取引について書かせていただきました。私たちSt.Pierresは、この商社との長年のビジネスを通じて、日本の文化や日本食について多くのことを学ばせてもらいました。この最終回のコラムを書いているのは2017年6月21日、南半球の冬至に当たる日ですが、ちょうど二ヶ月ほど前に訃報が飛び込んできました。東京共同貿易の設立者、金井紀年氏が亡くなられたのです。

金井氏は94歳でしたが、その人生の大部分を日本食を世界に普及させることに尽力されました。金井氏は、活動拠点とされていたアメリカに初めて握り寿司を持ち込み、これが現在世界中に広がる寿司ブームの原点になりました。彼がアメリカに持ち込んだ日本食は、地酒や枝豆など、数え出したらきりがありません。アメリカ以外にもペルーやメキシコなどにもネットワークを広げ、日本の「和食」を、ユネスコの無形文化遺産に登録される世界の「Washoku」へと昇格させることに貢献されました。
（参照：https://en.wikipedia.org/wiki/Noritoshi_Kanai）

金井氏の和食に対する貢献と情熱は、「和食ドリーム」というドキュメンタリー映画にもなっています。これは日本の方にもぜひ一度ご覧いただきたい映画です。
http://www.washokudream.jp/

夢のつづき

私は、アメリカで行われた金井氏の葬儀に招待され、氏のご家族や生前に交友を深められた知人、各地の共同貿易の代表者や取引先の代表者400名の方々と共に、最後のご挨拶をさせて頂きました。設立者の金井氏を失った事は大変残念な損失だと思いますが、後継者が金井氏の遺志を引き継ぎ、これからも更なる発展をされることを願っています。

この葬儀で色々な方とお会いし、金井氏の人生についての話を聞くにつれ、氏が達成された偉業、ビジネスだけにとどまらず日本とアメリカの文化の架け橋となられたことについて、再び深く考える機会を与えられました。

St.Pierresでは、「健康的でおいしい日本食をリーズナブルな値段で人々に提供し、それを実践することで社会と人々に貢献すること」、「人々（アソシエイト、お客様、取引先）を第一に考え、大切にすること」を会社のミッションとしています。　金井氏の生前のご尽力とも重なるこのミッションを、私たちはとても誇りに思っています。1984年創業以来、アソシエイト（従業員）の日々の努力、お客様、取引先の支援のおかげで現在(2017年6月)までに、ニュージーランド国内で54店舗を展開するまでに成長することができました。人口470万人弱のこの国で50店舗というのは、ある種のマイルストーンではないでしょうか。

これからもSt.Pierresは立ち止まることなく、ニュージーランドで日本の優れた味と文化を広げていくつもりです。以前のコラムでも触れましたが、ビジネスを成功させる為には『人』が成功の鍵となります。私たちは、現在のアソシエイトの育成だけでなく、St.Pierre’sの将来を担うことになる新しいアソシエイトのリクルートを積極的に行い、次の世代の推進力としたいと思います。そしていつの日か、St.Pierresで作り上げてきたスシが再び海を渡り、海外にまで展開できるようになると面白いですよね。

最後になりましたが、これからビジネスを始めることを考えている日本の方々に向けて、僭越ながらメッセージを贈りたいと思います。私はある意味無知で無鉄砲だった若かりし頃に、色々な挑戦をしました。挑戦の結果は上手く行くこともあれば、失敗することもありました。もちろん失敗した時には落ち込むことも多々ありましたが、思い返してみると、それらの失敗は何事にも代えがたい貴重な人生の学びを与えてくれました。

挑戦すれば失敗することもあるでしょう。ただ明らかなことは、挑戦しなければ成功もない、ということです。　ですので若い人には、ぜひ「失敗を恐れず挑戦すること」を続けて欲しいと思います。　失敗を糧にしながら挑戦を続けること。　それが唯一の成功へと続く道なのだと思います。　

12回に渡るコラムの連載、お読み頂き有難うございました。

Nick Katsoulis

Co-owner/Director of St. Pierre’s