早いものでこのコラムのシリーズは今日で最終回となります。今日は最終回にふさわしい(?!)超重要項目「リファレンスチェック」についてお話ししたいともいます。日本ではほとんど聞かない言葉ですが、ニュージーランドの採用過程では必ずあります。リファレンスチェックとは何か?タイミング・質問内容・注意点についてレフリー(リファレンス先/照会者)の立場から解説していきます。
リファレンスチェックとは何か?
一言で言うと
「企業が採用過程で行う経歴及び人物照会」です。
もう少し詳しく言いますと、企業は採用を行う過程で、書類審査や面接を行います。その後内定候補者が決まると、その人の前職での勤務状況や人物などについて関係者(Referee レフリー)に問い合わせます。主に電話で行うケースが一般的ですが、最近では経費削減のためかオンラインでアンケート形式でリファレンスチェックをすることも増えてきました。外資系企業や海外の企業では、新卒や中途採用関係なくリファレンスチェックを行うのが一般的です。
リファレンスチェックが行われるタイミングは?
企業によって多少の幅はありますが、基本的には採用決定の直前に行われることが多いです。
リファレンスチェックの目的
通常リファレンスチェックが行われるのは採用の最終段階になりますので、目的は「最終確認」になります。この時点で採用側は、それまでの書類審査や面接の結果、「内定を出したい」と思っているわけですので、その判断に間違いはないか、見逃していたことはないか、ということを確認する機能を果たしています。
リファレンスチェックは誰に頼むのか?
リファレンスチェックの目的はそもそも「求職者の経歴及び人物照会」ですので、必然的に
求職者の仕事ぶりについて詳しい人=上司や元上司
がレフリーになります。通常1−2名をレフリーとして求職者が履歴書に記載したり、要望があった時に採用側に連絡先を提出します。ここでよく問題となるのが、今の職場に内緒で就活している場合です。まだ決定していない時点で、今の上司に転職希望先から連絡がいってしまうと大変気まずくなります。その場合は、それ以前に働いていた会社の上司にレフリーを依頼したり、直属の上司でなくても仕事内容をしっかり把握している上司や先輩に依頼することもできます。どうしても見つからない、という場合を除いて、自分と同じレベル(立場)の同僚や部下にはレフリーを依頼しないのが一般的です。
このリファレンスチェックは、採用側の企業とレフリーの間で行われます。求職者が参加したり、意見をのべたりする機会は一切ありませんので、レフリーを選ぶ際には慎重になる必要があります。
またレフリーになってもらう相手には、企業から連絡が行く前に説明をしておくことも大切です。少なくとも「どんな仕事に応募しているのか?」「いつごろリファレンスチェックの連絡がいくのか?」「電話なのか、オンラインなのか?」をレフリーに伝えておきましょう。
リファレンスチェックの質問内容
リファレンスチェックの質問内容は大きく分けて2つのカテゴリーがあります。
一つは「事実確認」、もう一つは「勤務態度や職務能力」です。
まず一つ目の「事実確認」では、
- 勤務期間の確認
- 求職者とレフリーの関係
- 求職者の仕事内容
- 退職理由
などが聞かれます。これは淡々と事実を述べるだけで、企業側は履歴書や面接で得た情報に誤差・偽りがないか確認します。
もう一つの「勤務態度や職務能力」は、質問を受けているレフリーが面接を受けている気持ちになるほど深掘りした質問が続きます。職種によって内容は多少異なるのですが、ほぼどの企業でも聞かれる一般的な具体例は、
- 全体的なパフォーマンスレベルとその評価の理由。それを裏付ける具体例
- プレッシャーのある環境でも能力を発揮できるか?それを証明する具体例
- 問題解決能力をどう評価するか?それを裏付ける具体例
- 周囲とのコミュニケーションについての評価と理由
- 上司との関係や求職者にあったマネージメントスタイル
- 遅刻や欠勤状況
などです。
これはほんの一部で、通常このような質問が少なくとも10問、多い時で20問近く質問されます。その質問の半分近くが、具体例を求めてきますので、よっぽどその人物の仕事ぶりを知っている人でないとレフリーは務まらないことがよくお分かりいただけると思います。
そして最後に必ずといっていいほど聞かれることは
- 「またチャンスがあればこの求職者を採用したいと思うか?」
という質問です。これはYes/Noの究極な質問ですので、ここでレフリーが自信をもってYesと言うことができれば内定がさらに近づくでしょう。
捕捉)レフリーの語学力
リファレンスチェックで聞かれる質問を見てお察しの通り、質問内容は極めて深く、詳細に迫ります。これが外資系や海外企業の場合は全て英語、もしくはその国の言語で行われます。その点も考慮して、求職者はレフリーを選ぶ必要があります。もしどうしても言葉の壁が理由でレフリーを選べない場合は、採用側に説明してアドバイスをもらうことをお勧めします。
まとめ
外資系企業や海外就職をする際にリファレンスチェックは避けて通れないプロセスです。
自分がレフリーを探す場合は、リファレンスチェックの趣旨をしっかり理解した上でレフリーを選びましょう。そしてレフリーに選んだ相手には必ず事前に連絡し、レフリーになってもらうことを承諾してもらいましょう。
そして一番大切なことは、たとえ転職を決意していたとしても、離職するまでしっかり仕事に取り組み、職場において良好な人間関係を築いておくことだと思います。
12回のコラムにお付き合いいただき、ありがとうございました。みなさんの就活に少しでもお役に立てば幸いです。
本コラムは一般的な海外就活にお役に立つ情報発信を目的としております。特定のお仕事にフォーカスしたアドバイスではありませんのでご注意ください。また内容の無断転載はご遠慮ください。
(8月5日執筆)
- Atsuko Takada (面接アドバイザー)
- NZ在住25年。
- 元外資系エアラインCA採用面接官。
- 海外・外資系就職に特化した英文履歴書・英語面接アドバイザー。
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