平均気温の上昇により、ここ30年で急速に成長しているのタスマン湖。マウントクック・ヴィレッジを訪れた際には、気候変動の影響を目で感じてください。
筆者は環境問題に関心はある方なのですが、地球温暖化に対しては「地元は昔と比べて雪が少ないな、そういえば」と思うくらいで、あまり身近に感じられなかったのが実のところです。
しかし先日、気候変動の影響を目で感じられる場所に出会いました。ニュージーランド最大最長の氷河・タスマン氷河にある「タスマン湖」です。
泥色の水を湛えるタスマン湖。遠くに見える平らな部分がタスマン氷河。
30年前には存在しなかったタスマン湖
タスマン湖はタスマン氷河の端にあります。観光の拠点として人気のマウントクックビレッジからは車で約10分です。近くに駐車場があるため、多くの観光客が訪れています。遠くにはタスマン氷河も見渡せます。
この湖は気温の上昇によって氷河が溶け出した水により、ここ30年ほどで出現した湖です。
マッセイ大学ウェブサイトの2008年のリポートでは、研究者の話として「1973年には湖は存在しなかった」と説明。また昨年のティマル・ヘラルドの記事では、同地域で45年の経験を持つパイロットが「1980年代には湖はなかった」と証言しています。また後者の記事では2009年から16年の間に、湖がどれくらい拡大したかを写真で紹介しています。
http://www.stuff.co.nz/timaru-herald/news/76993343/Pilots-record-Tasman-Glacier-lake-changes
将来、消滅する恐れも
タスマン氷河はニュージーランドが誇る観光地の一つですが、消滅も危惧されています。
国際NGO「憂慮する科学者同盟」は運営するウェブサイト「Climate Hot Change」において、ニュージーランドの氷河はほんの少しの気温上昇でも著しく減少すると指摘。タスマン氷河については、消滅する可能性があると警告しています。
http://www.climatehotmap.org/global-warming-locations/tasman-glacier-new-zealand.htm
数十年前には存在しなかった湖の急速な拡大を目にした後では、「いつかなくなる」という警告も単なる脅しではないように感じられます。
タスマン湖に浮かぶ氷河。ボートツアーなどで間近に見ることができる。
旅のついでにぜひ足を伸ばしてみて
筆者がこの事実を知ったのは、氷河の減少が観光に与える影響を研究しているリンカーン大学博士課程の学生に出会ったことがきっかけです。そうでなけばタスマン湖が気候変動でできたなんて、考えもしなかったと思います。
タスマン湖すぐ近くのマウントクックビレッジは、壮大な自然に囲まれた小さな村です。晴れた日にはマウントクックを望むトレイルでハイキングしたり、雨ならば「サー・エドモンド・ヒラリー・アルパインセンター」でプラネタリウムや3D映画を楽しんだりもできます。
マウントクックビレッジを訪れた際にはぜひ、タスマン湖にも足を運んで気候変動の影響を感じてみてください。