都会に住み、きれいにパッキングされた食品をスーパーで購入して食べるだけの生活を続けていると、自分が口にしている食べ物がどこからきているのかということに、大人でも無関心になりがちですよね。都市からほんの少し離れただけで簡単に自然に触れられるニュージーランドは、第一次産業に対する知識と意識を高めるのには最適の地ではないでしょうか。食に対する意識が高く、手本にしたくなるような食生活を送っている人もニュージーランドにはたくさんいます。
長く白い砂浜が続くビーチに沿って広がるパパモアは、ビーチ沿いでの優雅な生活を夢見る人々のデマンドに答えるべく、住宅地としての開発が盛んに進められている地域です。そのパパモアの中心地に、自然に囲まれて生活し、その素晴らしさを教えている先生がいます。
子供も大人も楽しめる、自然の中での食育
小学校の教員免許を持つKevinさんと、ガーデニングと食に関する豊富な知識を持つJaneさんが夫婦で営む「Teacher in the Paddock」では、牛の乳搾りやバター作りなどといった実体験を通して、動植物と食に関する知識を深めることができます。「farm(牧場)」ではなく「paddock(小さな放牧地)」と呼ばれているとおり、牛、馬、ニワトリがいるだけの小さな場所ですが、それゆえに、親戚のおじさんの家にでもいるかのような温かみと、観光地化された牧場にはない自由さを感じることができます。
「地球にやさしいライフスタイルと、子供たちに教えるということ。その両方を追求してたどり着いたのがこの場所なんだよ」とKevinさん。「学校で勉強する算数もテクノロジーも大切だけど、実際に触れたり匂いを嗅いだり、体験してみないとわからないこともたくさんある。生活の中で自然と算数を学ぶこともできるし、自分の行動は周囲のあらゆることとつながっているんだっていうことを理解すれば、必然的に他に対する尊敬の気持ちも生まれるんだ」と、教壇ではなく自然の中で子供たちに教えることを選んだ理由を話してくれました。
Kevinさんは動物の行動の意味や接し方、バターやモッツァレラチーズなどの乳製品の作り方を、Janeさんは植物の育て方や美味しい食べ方などを教えてくれます。搾った生乳を使ってその場で作ったバターや、巣箱から取った濃厚な巣蜜をそのまま食べるといった貴重な体験もできます。
「自分の住んでいる地域で採れた蜂蜜を食べれば、地域の植物の花粉に対する耐性も少しずつ身についていくんだよ。オーガニック野菜や果物もいいけど、長距離輸送されたオーガニック野菜よりは、地元で採れた新鮮な野菜を選んだ方が体にはいい」と、地元の食材を食べる大切さも教えてくれました。
学校や幼稚園からのグループでの訪問が多いようですが、個人向けのアフタースクールプログラムやホリデープログラムの他、家庭でのプロバイオティック食品の作り方など、大人向けのワークショップも開催しています。
ちなみにこの「Teachers in the Paddock」はお二人がご自宅を解放して行っているものなので、訪れる際には必ず事前に問い合わせと予約が必要です。
新鮮食材と、お土産にもおすすめのローカルプロダクト
自給自足し、新鮮な食材を手にすることの良さはわかるものの、住環境や生活そのものを変えるのは、簡単にできることではありません。誰でも手軽にできる第一歩として、スーパーではなく地元のマーケットを利用することから始めればいいと、KevinさんとJaneさんにアドバイスを頂きました。
同じくパパモアにある「New Zealand Farm Shop」は、もともとご自身も農業を営んでいたAllenさんとStephanyさんがオープンさせた、生産者と消費者をダイレクトに繋ぐお店です。「農業をしていた時、自分たちの手元から離れた生産物が、消費者に届くまでどのように扱われているのかいつも不安だった」というお二人が、このお店で取り扱っているのは、生産者の顔が直に見えるものだけだそうです。
店内には生鮮食品の他に、ハーブティーやオーガニック石鹸など、パパモア周辺で作られたローカルプロダクトも揃っているので、他では目にすることのない珍しいお土産もみつかりそうです。
併設のカフェでは、オーガニックミートとショップで売っている新鮮野菜を使ったブレックファストとランチメニューが楽しめます。
皆さんのお住まいの地域にもきっとこのような健康的な食生活を応援してくれるお店があるはずです。是非探してみてください。
May
教員、イベントコーディネーター、翻訳者、フリーライター、2児の母。
イベント、アート、教育、食、人を通してニュージーランドを知るべく日々探索中。