不調の症状が治らない。薬を飲んだり、気分転換して、一時的に良くなってもまたぶり返す。症状だけをなくそうとしても良くならない時、不調の本当の原因に気がついていないことがよくあります。

症状は声なき声

不調の症状を車で考えてみましょう。ガソリンがなくなりかけると、Empty ランプが点灯しますね。病気や不調の症状は、このEmpty ランプみたいなものです。ランプを見ないようにしたり、消そうとしたりしても、根本的な解決になりません。ガソリンを入れないと走らなくなります。
 
同じように、心で起こっていることが、体に現れることがよくあるのです。例えば、胃が痛い時は、本当は心が痛いのかもしれません。でも、心の痛みを認めたくなくて、無意識に気づかないようにしていることがあります。口に出せないストレスや我慢が重なると、体に出たり、心のバランスを崩したりします。切っても切れない関係にあるのが、心と体です。

症状は、声なき声なのです。「どこか無理をしてるよ」「本当の思いを押し殺しているよ」ということを示唆しています。

健康の本当の意味

癒やしー”Heal”の語源は、古英語の”hal”から来ています。Halは全体性・完全性という意味です。「健康（Health）」や「全体性（Wholeness）」も、同じ”hal”からきています。つまり、健康というのは、心・体・魂の全体がうまく機能している状態と言えます。心理学から見ると、病気や症状は、全体性が損なわれている状態なんですね。

自分の中で押し殺している部分、排除し否定している部分が、結晶となって現れたのが、症状なのです。その症状を生み出している心のパターンに気づかない限り、１つの症状を消しても、また何か別の症状が現れます。症状の下に隠れている、本当のメッセージ、原因を探り、解決する必要があるのです。

自分で原因を探すのが難しい理由

では、その原因を見つけ、いやすにはどうしたらいいのでしょうか。

不調の症状が生まれた原因は、そもそも、自分の中に認めたくないものがあって、それを排除した結果です。心理学者のユングは、自分自身が否定している部分、押し殺している部分、自分がなりたくないと思う部分を、“Shadow（影）”と名づけました。Shadowが症状という形で現れて、「これを自分の外に追い出しているよ」と教えてくれていると言うのです。

自分で悩みと向き合い、解決することがなぜ難しいかというと、悩みを作り出しているの本当の原因は、自分では認めたくないもの、無意識に無視しがちなものだからです。自分がよっぽど意識して、自分自身に正直に向き合わない限り、それが重要なことだと気づかない。「それは関係ない」「別に取るに足らない」と、ついつい見逃し、無意識に自分でそれに向き合うのを回避してしまうのです。

いやしとは “全体性の回復”

普通、病気に限らず、嫌なものがあると、私たちは取り除こうとするのが普通ですね。例えば、顔のしみやしわをなくしたい、脂肪を落としたい(笑)、胃薬や頭痛薬を飲む、ガンを取り除く、など。悪いところを“なくす”アプローチが主流です。

このアプローチが悪いということではないですが、心理学やスピリチュアリティ―に一貫した、心に対するアプローチは、まったく逆なのです。「生命」という全体性の観点から見て、自分の中で、排除、否定されてきたものを、見つけて、統合するんです。

Shadowを消しきれないのには、大切な理由があります。それは、Shadowを認め受け入れた時、わたしたちは初めて、真に「自分自身のすべてを生きている」と、実感することができるからです。自分の中に、隠したり、否定したりする部分があると、思いっきり生きられないのです。いつも何かを避け、びくびくと生きている。闇があるから、光の存在を感じられるように、Shadowは実は、「ありのままの自分を生きる喜び」を謳歌する“入口”なのです。

悩みや体という目に見える症状の深層にある心と魂に目を向けることで、症状の回復の可能性が格段に広がります。つまり、真の健康は、全体性の回復ということなのです。

次回は、排除していた部分を受け入れて全体性を回復することが、どのように自分らしくいれることにつながるのか、わたし自身の経験をお話したいと思います。