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第9回 NZではどんな検診をやっているの?

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日本では人間ドックなど「健康診断」や「検診」が『常識』として行われています。
それぞれの検査にどれだけ意味があるのか、考えたことありますか?
今回はNZの「健診・検診」の状況と、それらの検査の是非について語ります。
(注:「健診・検診」は何も症状がない時に行う検査のことなので、症状がある方はもちろんその都度GPを受診してくださいね。)

09-1

がん検診

NZ政府にカバーされているがん検診

以下の3つが、現在ニュージーランド政府が行っている集団検診です。(大腸がんの検診は、お住いの場所により、まだ始まっていないところもあります。)

乳がん検診

45歳位から69歳まで、無料、2年おき
家族歴がある方は、公立病院で45歳になる前にスクリーニングが始めらる可能性がありますので、GPにお尋ねください。

子宮頸がん検診

20歳から69歳まで、有料(ただし日本人は無料)、3年おき

大腸がん検診

60−74歳、無料、2年おき
2019年現在便潜血検査による無料検診がWaitemata, Counties Manukau, Hutt Valley, Wairarapa, Southern, Nelson/Marlborough and Hawkes Bay では開始されています。
残りの地域でも2020年までには開始される予定です。

家族歴のある方は、公立病院で大腸内視鏡によるスクリーニングが受けられる可能性がありますので、GPにお尋ねください。

その他のがん検診を希望の場合

(以下のすべてが、意味がある検査として私が勧める訳ではありません。)

前立腺がん

PSAの血液検査と 直腸指診はGP受診時にしてもらえます。
もしも超音波検査をしたければ、それは私費となります。($200ぐらい)

皮膚がん

GPがチェックするので、GPクリニックを受診してください。
Mole Mapや皮膚科専門医によるチェックがご希望の方は私費となります。

肺がん

無症状の場合はレントゲンは私費になります($100)。
もしも検診でCTをしたい方は、私費($430)です。
小見出し4:胃がん
遺伝的に胃がんの発生リスクが高いとわかっている人は、GPから公立病院に紹介状を送ってもらえる可能性があります。
それ以外は私費となります。
(経口のバリウム検査$380。ただし日本のようにいろいろな体位での二重造影は無いです。胃カメラは$2000程度。)
 
日本の人間ドックと同じようなことをNZでしたければ、胃カメラと胸部レントゲン、腹部超音波、あとはGPでの血液検査、政府のカバーする検診を選べば、大体$2500ぐらいです。
日本円にすると185,000円ぐらいですね。(2019年10月現在はNZドルが安いので、もう少し安くなります。)

でも日本の人間ドック(40,000円から60,000円)に較べると、かなり高いです。

ニュージーランドでできる健康診断・チェック

GPに行けば、体重、血圧、心音をチェックしたり、皮膚ガンのチェックは普通の診療時間中にしてもらえます。
コレステロールや肝機能、腎機能などが心配で調べたいと言えば、検査もしてくれると思います。
これだけなら受診料しかかからないはずです(私の働くクリニックではそうです)。
呼吸機能検査、心電図は多分GPクリニックで、余分にお金を払えばやってもらえると思います。私の働くクリニックでは前者が$35、後者が$45です(受診料は除く)。

呼吸機能検査はGPクリニックでできないと、他に健診としてやってもらえるのはプライベートの専門医のクリニックしかないかもしれません。
(健診での呼吸機能検査は意味がないです。心電図もほとんどのケースで意味がありません。)

胃カメラやレントゲンはプライベートで検査を受けることになるので、胃カメラと大腸内視鏡両方したとして、$4000ほど。
片方ずつ受けたら、胃カメラは$2000ほど。大腸内視鏡は$3000ほどだと思います。
(大体の参考にしてください。施設によってかなり違うようです。)

09-2胸部レントゲン$100。胸部のCT $430 程度。
(これも肺ガンの健診としては意味なし。)

腹部と骨盤の超音波検査して$300。(これも健診としては意味なし。)
聴力検査が hearing clinic(街にある補聴器を買ったりするお店です)で$70。(これも健診としては意味ないと思います。)
目のテスト(視力、眼底、眼圧など)が optometrist(メガネを作りに行くお店)で$60。(これは定期的にやる意味はあると思います。)
(これらの費用は自分の経験といろいろなウェブサイトからの情報によります。)
全ての検査が終わって、またGPで検査結果について説明を聞く必要があると思うので、もう一回GP受診料がかかります。

以上を下の表にまとめてみました。費用は地域や施設によって異なりますので、だいたいの目安だと御考え下さい。

09-3

やる意義のあまり無い検査はやめよう

人間ドック、検診で検査をする場合、

1. その検査をすることで、何らかの異常を早期発見できること そして、異常が本当の”異常”である可能性が高いことと、また見落としが少ない検査であること、が重要です。医学的に言うとFalse Positive 擬陽性 とFalse negative 擬陰性の出る割合が低いことが大切です。
 
 または
 
2. 異常結果が出た場合、自分または医師が何かをして、その異常を改善できること。またはその異常を知っていることで、将来何かの問題が起こるのを防ぐことができること。

といういうことがなければ、あまり意味がありません。
その意味からいうと、日本の人間ドックには無意味な検査が非常に多いです。

詳細に興味がある方は、私のブログを参照してくださいね。

最後に

09-4予防医学で一番大切なのは、検査でなく、自分自身で自分の健康のために何をするかということだと私は思います。

タバコを吸いながら、肺がんを心配して胸部レントゲンを撮る、運動もしないで高脂血症状が無いか血液検査をする、毎日飲酒して肝機能を心配するというのは、本末転倒です。

「人間ドック」のような検査ができないかと思っている方は

  1. ニュージーランドで日本の人間ドックと同じことをするのは可能であるが、費用がかかる
  2. どの検査が本当に自分にとって意味があるのか、見極めることが大切。(わからなければ、GPと相談してください。「日本の常識」は「世界の常識」でないことがあります。)
  3. 生活習慣の改善は疾患の予防につながるので、常識に従い、また情報やサポートが必要であればGPを受診して、ストレスを減らした健康な生活を送ることを心がける

ことを覚えておいていただきたいと思います。

 

次回は、日本では多分聞いたことがない「ペイシャントポータル」について説明します。
何かご存知でない人は、是非一読を。

野田のりこ (Noriko Noda)
 
日本で外科医として勤務後、2002年にNZへ移住。
NZでも医師免許を取得。現在General Practice 専門医として働く。
音楽やクラフトが趣味。
 
ブログ
https://nzdoctor.net