前回、プロヴォケーションとは何かについて説明しました。今回は、プロヴォケーションに基づいた室内環境にはどのようなものがあるか具体例をお話します。
例えばお絵かきコーナー。机の真ん中に木の切り株、虫のレプリカを置き、色鉛筆を透明のビンに入れ、お花を飾っています。
ただ、色鉛筆と紙を用意するのではなく、お絵かきに興味のある子どもたちも無い子どもたちも「おっ、なんか面白そうなものがあるぞ」と、思わせるように工夫するのがプロヴォケーションに基づいたセッティングだと言えると思います。
また、以前も書きましたが、ニュージーランドでは先住民マオリの文化や言語も積極的に子どもたちに伝えています。
うちの園の子どもたちは、特にマオリの神話や伝説の話が好きなので、絵本を見ながら創造力を活かして、それぞれ絵を描き始めます。
こちらは、サモアの国旗を書いてもらうためのセットアップですが、子どもたちは自由に色を塗ったり、まったくオリジナルの絵を描いたり、紙飛行機を作って楽しんでいる子もいました。
他の例として、うちの保育園では毎週、小麦粉粘土を作っています。
小麦粉粘土とは、小麦粉、塩、油、水を入れて作る粘土の事です。これも、ただ白だけではなく、様々な色のカラーパウダーを混ぜて小麦粉粘土を作ります。そして、子どもたちは、ただ色付きの小麦粉粘土を作るのではなく、用意されている木の枝や葉っぱ、昆虫のレプリカやアイスの棒を使って独創的な作品を作っていました。写真は、子どもたちが遊ぶ前のセットアップの状態です。
また、青色を混ぜて小麦粉粘土を作って、海に関連した素材を机の上にセットアップするとこのような鮮やかな色のセットアップが出来上がり、子どもたちの注意をひくことができます。
プロヴォケーションは、子どもたちの想像力を刺激するというコンセプトですが、こうして、大人がある程度、誘導するということですね。アワビの殻も子どもの想像力を刺激する立派なマテリアルになります。NZでは、アワビはパウアといいます。マオリ語がそのまま英語として使われている例ですね。
また、このように、小麦粉粘土を箱の中に入れ、型抜きやローラーを用意することで、子どもたちはそれぞれの道具を使い、様々な遊びを自分たちで展開していきます。
セットアップの誘導通り、つまり先生の狙い通りというか、予想通りに反応し遊びを展開する子もいれば、そうでない子もいます。正解、間違いが一切ないので、こうした方がいいよ、なんて無粋なことは言いません。先生たちは、子どもから手伝って欲しいと言われたときや、作りたいものがあってもその形にするのにやり方がわからないというときは、どうすればいいか教えるというスタンスで接しています。
セットアップにも正解がないので、僕たち先生も毎日試行錯誤しながら、どうすれば子どもを刺激(Provoke)するようなセットアップができるかを考えています。おもしろいアイデアが湧いてきた日はやはり嬉しいですね。
一番いいのは、先生が満足のいくセットアップを作ったときかなと思います。それは、先生自身が遊びたいと思うセットアップじゃないと、子どもも刺激されないと思うからです。そして、その結果、自分も子どもと一緒に遊んでいます。先生が心から楽しむことで、子どもといい関係を築けると僕は思っています。
このように小麦粉粘土ひとつとっても、いろいろなことができますよね。
その他、プロヴォケーションに基づいた自由遊びとしてユニークなのは、シェービングフォームやスライムを使ったメッシープレイというのも一般的です。これは僕のブログでも詳しく書いているので興味のある方はぜひ参考にして下さいね。
- Naoki Yajima
- 日本で7年保育士として働き、保育の修士号を取得した後、ニュージーランドに移住。
- オークランドの保育園で働いてもうすぐ2年です。