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第8回 レッジョ・エミリア教育とプロヴォケーション

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今日は、ニュージーランドの保育園、幼稚園でとても大切にされてプロヴォケーションという考えについて書きたいと思っています。

プロヴォケーション(Provocation)を辞書で引くと
  • 挑発
  • 怒らせること
  • 刺激
という意味が出てきます。

ニュージーランドの保育園で言われているプロヴォケーションはこの「刺激」のところです。つまり、「子どもの想像力や能力を刺激するような(室内・室外)環境をつくろう」というコンセプトのことです。

08-01では、なぜニュージーランドでこのプロヴォケーションというコンセプトが重視されているのでしょうか?
ニュージーランドの一日の流れを以前説明しましたが、ニュージーランドは「子どもの自由遊び」を重視しています。 そのため、教室は日本の小学校のように机がキレイに並んでいるわけではなく、いろいろな遊びを子どもが自ら選択できるように、先生たちがいろいろなコーナー(ステーション)を作って準備します。

08-02コーナー(ステーション)とは、ままごと、製作、絵本、積木など、それぞれの遊びのスペースを作り、子どもたちはその中で自分でやりたい遊びを見つけていけるようにと室内に準備していきます。ニュージーランドの保育業界に「環境は第三の先生」 という言葉があるのですが、ニュージーランドの教育省も、プロヴォケーションがテーマの研修を推奨するなど、子どもたちが自分たちから「おもしろそう!これで遊びたい!!」と思うような、遊びのコーナーをたくさん作っていきましょうという流れがあります。

その中で、このニュージーランドととても似ている教育方針を持っているのが、イタリアにあるレッジョ・エミリアという町。レッジョ・エミリアでは、子どもたちが自由に発想・表現できるようさまざまなツールやマテリアル(物、素材)が常備されており、子どもの想像力や創造力を高めていけるように部屋がデザインされています。

08-03子どもの想像力や創造力を「刺激」するように、どう部屋をデザインするか、どのように素材や道具を準備していくのかを保育者が考えていくのです。このレッジョ・エミリアの考え方がニュージーランドの教育方針と似ているということから、ニュージーランドでプロヴォケーションという言葉が日に日に注目されるようになってきたのではないかと思います。

それでは、日本ではどうでしょうか。日本の保育園・幼稚園では先生が季節や年間行事に基づいていろいろな活動を計画して、子どもたちがみんな一緒に何かするという「集団の中での個人の発達」が大きな教育方針になっていると感じます。僕が日本で働いていた時も、「直樹先生のクラスの子どもは〇〇だよね」という風に、集団として見られることが多く、僕たち保育士も「集団の中できちんと生活できるように」と意識しながら子どもたちに接していました。

08-04その点、ニュージーランドもイタリアのレッジョ・エミリアも、より個人としての発達を細かく、丁寧に見ていけるようにというコンセプトのもと、一日の流れを考え、室内、室外の環境をデザインしています。年間行事の計画はほぼありません。そして、日本のように「集団の中で生活できるように子どもたちの生活レベルを上げる」ということにはあまり重点を置いていません。文化が違うと、教育方針も当然変わってくるというのが、面白いですよね。

それでは、次回、そのプロヴォケーションを使った自由保育の例を紹介したいと思います。

Naoki Yajima
日本で7年保育士として働き、保育の修士号を取得した後、ニュージーランドに移住。
オークランドの保育園で働いてもうすぐ2年です。
 
ブログ: ♡ オトメン保育士のニュージーランドライフ ♡