花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息は、症状がうまくコントロールされていないと辛いですよね。
患者さんの中には、効果的でない治療法を続けているため、状態が改善せず、悪循環になっている方も見受けられます。
今回は、ニュージーランドでも多い、花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息のマネージメントについての記事です。
花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息はすべて『アトピー』といって、免疫システムが、日常に存在するアレルギー誘発物質(ダストマイト 家ダニなど)に必要以上に過敏に反応するために起こる病気です。
遺伝的な要因が多いのですが、環境による要因もあります。
「Atopic March」といって、赤ちゃんの時の「アトピー性皮膚炎」に始まり、小児期に「喘息」が起こり、そのあと大人になって「花粉症」になる、ということは良く見られます。
アトピー性皮膚炎(eczema またはatopic dermatitis )
アトピー性皮膚炎は、赤ちゃんや小学校へ行く前の子供によく見られ、子供が大きくなるにつれ、自然に徐々に改善していくことが多いです。
ただ大人になっても、かなりひどいアトピーの症状が続いている人もいて、そういう人の中には、コントロールのために免疫抑制剤が必要な人もいます。
お子さんがアトピー性皮膚炎に苦しんでいると、その子供の世話をするお母さんや家族の方にとっても、精神的負担になりますよね。
ここで重要なのは、アトピーは「治す」病気ではなく「コントロールする」病態であるということを理解することです。
アトピー性皮膚炎の管理の基本は、
- 皮膚のバリアーを改善すること(保湿剤)
- 抗炎症剤を正しく使うこと(ステロイドの塗り薬)
- 誘因になるものを避けること
です。
この中で最も大切なのは、『保湿剤』を使って、皮膚のバリアーをどれだけ正常に近づける、ということ。
日本には、アンチステロイド派の方も多くいるようですが、ステロイドの塗り薬は炎症を最小限に抑えるために必要な薬剤です。
ただ、保湿剤を十分に使えば、ステロイドの塗り薬が必要になる頻度が少なくなるので、とにかく保湿剤は少なくとも2−3回/ 日は塗ってください。
もしも誘因となるものがわかっていれば、それを避けてくださいね。
例えば、ウールの服とか、ある種の食べ物とかですね。
ただ、赤ちゃんの場合は、親御さんがご自分の判断で特定の食べ物を排除したり、置き換えるのは危険なので、必ず医師に相談してください。
喘息
アトピー性皮膚炎は皮膚が慢性的炎症の場であったのですが、喘息は息が通る管(気道)に慢性的に炎症が起こる病気です。
ニュージーランドは世界でも喘息の患者さんが割合が多い国で、子供の4人に1人、大人の6人に1人が喘息持ちであるということです。
気温が下がったり、風邪をひいたり、アレルゲンを吸い込むと、気管の炎症はひどくなり、いわゆる喘息発作が起こることもあります。
喘息発作までいかなくても、咳が止まらないとか、運動するとぜいぜいするとかいうことが起こるようであれば、喘息のコントロールはもう少し改善できるはずですから、GPにかかって治療方法の見直しをしてくださいね。
喘息に使われる薬は、非常に大きく分けると
「症状が出た時に使う薬」と
「症状が出るのを防ぐ薬」があります。
「症状が出た時に使う薬」は「気管支拡張剤」の中でも即効性があるもので、ニュージーランドではRespigen、salamol、ventolin(これらはすべてsalbutamolという薬で、ブランドが違うもの)またはBricanyl (turbutaline)です。
「症状が出るのを防ぐ薬」には、いろいろなものがありますが、まず使われるものは、ステロイドの吸入薬です。こちらではFlioxotide、QVar、Pulmicortなどです。
喘息の治療に使われる薬は、日本でもニュージーランドでもたくさんの種類があるので、ここには詳しく書きません。
もしも日本で処方されたものと同じものをニュージーランドで続けたい場合は、直接GPにその薬(吸入薬など)を持って行っていただければ、高い確率でどの薬か解明してもらえると思います。
どうしてもわからなければ、私のブログかnzdaisukiのウェブサイトから質問してくだされば、私ができる範囲で調べます。
喘息の治療で大切なことは、
- スペーサーが使える形の吸入薬は、スペーサーを正しく使うこと。
- ステロイドの吸入薬を使った後は、口をすすいで口腔カンジダ症になるのを防ぐ。
- もしも処方されている薬で、コントロールが悪い場合は、GPを受診して、治療を見直してもらう。
ことです。
もしも、家族の中で、タバコを吸う人がいる場合は、ぜひ禁煙してください。
家の外で吸っていても、他の家族に影響を与えますので。もちろんご自分のためにも、禁煙をお勧めします。
花粉症
ニュージーランドでは、花粉症に悩まされる人も非常に多いです。
季節に関わらず、1年中症状がひどくて、抗ヒスタミン薬を飲み続ける人もたくさんいます。
花粉症の基本的なマネージメントは、経口の抗ヒスタミン薬、経鼻ステロイド剤、目の症状が強い方は点眼薬、が主になります。
その他にも、状況によっては薬が補足されることもあるので、コントロールが悪い方はGPと話し合ってくださいね。
薬を使っても花粉症の症状がひどい方の中には、desensitization 脱感作療法で症状が良くなる方もいます。
残念ながらこれは、プライベートの免疫専門家による私費治療になりますが。
GPクリニックの中には、開始された脱感作療法を続けるのをサポートしてくれるところもありますので、必要であれば相談してみてください。
最後に
最近、私のクリニックでは、非常にひどいアトピーの子供はあまり見かけなくなりました。
患者さんやその親への教育がかなり徹底し、以前より正しいケアをしている人が増えたからかもしれません。
喘息も同じで、コントロールが非常に悪い人は、私の周りでは減った様な印象があります。
スペーサーを使う人が増えたり、いろいろな種類の吸入薬が選べるようになったことも関係しているのでしょうか。
それに較べると、花粉症の人は減ったという印象はありませんね。長い間アレルギー性鼻を起こしている方は、鼻の中の粘膜が厚くなって鼻が余計に詰まります。
鼻が詰まっているために夜寝られないとか、集中できない、とかいろいろな意味で日常生活に影響を及ぼすことが多いです。中には耳鼻科の専門家に紹介が必要になる人もいます。
この記事を読んで(いつも自分がしているケアとは違うなあ)と思われた方で、病気のコントロールが良くない方、または「ここにある事全部やっているけれど、症状がコントロールできない」と言う方、是非かかりつけのGPと一度話し合ってみてはどうでしょうか。
次回は、「うつ病」「いじめ」「ストレス」と言うニュージーランドのダークサイドを紹介します。
- 野田のりこ (Noriko Noda)
- 日本で外科医として勤務後、2002年にNZへ移住。
- NZでも医師免許を取得。現在General Practice 専門医として働く。
- 音楽やクラフトが趣味。