「海外留学」。なんとも高尚な響き、ですね。私が学生の時分には、考えもしませんでした、正直。なにしろ30年近く前ですし、そのころの島根県(私の出身地)には選択肢として無かったですね・・・。AICはAuckland International College、と名乗っているくらいですので、留学生の割合が非常に高く、全生徒の約6割です。恐らく、NZの学校で最も留学生の割合が高い学校の一つではないかと思います。ただ、日本人の数は多くありません。中国、韓国、ベトナムについで4番目です。親会社は日本の会社なのに、これではちょっと寂しい・・・。
日本人の留学生が少ないのは、なにもAICだけに限ったことではありません。残念ながら、一般的に日本人の留学生は減る一方のようです。子供の数自体が減っていることはもちろん影響していると思いますが、バブル崩壊以降、段階的に減りつづけて今や中国、インド、韓国等よりも少なくなっています。なぜ?。いくつか理由があると思います。
まず、日本の環境が快適すぎるからではないかと思います。日本は安全だし、物価は安いし、食べ物は美味しいし、コンビニいっぱいあって便利だし・・・。何も苦労して外国に行く契機が見つからない。それ自体は誇るべきことなのですが・・・。対して、その他アジア各国からの留学生は、保護者も生徒も、なんとか海外(先進国)に脱出することを強く考えて行動します。「ギラギラ感」が日本人とは全く違うように思います。留学して自分を高めて、環境の良い(と思っている)英語圏に住むという明らかな目的意識があって留学してくると思います。
それから特に高等教育に関して言えば、日本の学生にとって欧米の一流大学を目指そうという空気自体が無いのも問題だと思います。日本の高校生にとっての最高の目標は東京大学であったり、京都大学であったり・・・。さらに視野を広げて、海外の大学を目指そうという風潮は殆どありません。別に東京大学や京都大学がダメと言っている訳ではありません。ただ、それらの大学を目指すような高い学力を持っている生徒であれば、海外の大学にも挑戦して欲しいですし、チャンスはあるのではないかと思います。日本の大学でも、学部等によっては在籍中に海外留学を義務付ける所も出てきているようです。義務化しないと行かない、ということの裏返しですので全面的に肯定すべきではないのかもしれませんが、試みとしてはあり、なにかなと思います。
また、金銭的な問題も大きいと思います。実はこれが最も大きい問題ではないかと思います。NZに限った話ではありませんが、海外留学には相当のお金が必要になります。基本的に海外から留学目的で入学する場合、学校は地元の生徒よりも高い金額の学費を取ります。それに寮費やホームステイのお金もかかりますので、家計にとっては大きな負担です。例えば、米国のトップ大学に留学生として入学すると、4年間で「地方都市でそこそこ立派な新築マンションが買えるくらい」のお金が掛かります。正直申し上げて、一般的な家庭には厳しい金額かと思います。例えば中国の留学生が増えている要因の一つに、着実に富裕層が増えていることも挙げられると思います。
英語圏の国で比較するとNZへの留学に掛かる費用は比較的安くて済みます。治安も良く、勉強に集中できる環境ですので、留学先としてはとても競争力があるように思います。もっともっと、日本からNZへの留学が増えると良いと思いますし、個人的にもそのために努力したいと考えています。
AICアクティング・エクゼクティブ・ディレクター 中村敬志
1970年、島根県生まれ。 13年間の地方銀行勤務を経て、広島県に本部を置く教育関連企業に転職。 2006年より、Auckland International College(AIC)に勤務。