長期的にはプラスの国勢 成長のテーマは『持続可能な観光』
今回の政権交代は、基本的にそれほど大きな影響はないのではないかと考えています。例えば日本の憲法改正や、アメリカのオバマ政権が推進した医療保障制度改革のように、長期安定政権でしかできない取り組みというものはありますが、現状、ニュージーランドにはそのような腰を据えて長期で取り組むべき大きな問題はないように思います。それよりも、今回は二大政党制がしっかり機能し、適切なガバナンスが効いたという意味では、長期的に見て国にとってメリットのあることだと考えています。
重要なのは、中長期的に持続的な成長ができるかどうかです。2015年の国連サミットで採択されたアジェンダに対し、「SDGs(Sustainable Development Goals)」という国際目標が設置され、今、「持続可能な開発」ということが言われています。また、国連は2017年を「開発のための持続可能な観光の国際年」とし、SDGsの実現のために観光産業での取り組みの推進を図っています。「サステイナブルな観光」というものが世界的に注目される中で、観光というのはニュージーランドもイニシアティブが取れる分野だと思います。
最近投資を決めたスタートアップの企業は、もともと約2,000のツアーを扱っていましたが、現在あえて4~5つの体験型ツアーのみにフォーカスすることで業績を大きく伸ばしています。ニュージーランドにも豊富な観光資源はありますが、必ずしも多くあれば良いということではなく、数は少なくても世界的に見て本当に魅力のある観光資源は何かということを考えてもいいと思います。
今も多くの観光客が来ていますが、ニュージーランドの観光客の数だけが際立って増えているわけではなく、単に世界的なトレンドの一つとも言えます。今後は「世界一の」「世界で唯一の」というような、ここに来ないとできない「体験」をキラーコンテンツにして、対象の数を絞りつつ、効果的に広く認知させていくことがポイントだと思います。人を呼び込むコンテンツは、新しく作る必要はありません。「サステイナブルな観光」というキーワードに沿って既存のコンテンツを組み合わせたり、リバイスさせていけばいいのです。
世界的なトレンドである海外旅行者数の増加と、中長期的に見て持続的な成長が見込めるニュージーランドにおいて「サステイナブルな体験型の観光」というのは世界的にみてもユニークで今後も成長が見込める分野だと思います。我々も注目して投資をしていますし、政権が変わったからといって投資環境に大きな変化はありません。むしろポジティブにとらえています。
efu Investment
- 2008年創業の投資・事業運営会社。
- ニュージーランドに限らず、日本や東南アジアなどでの投資や事業運営を行っている。