「日本からのご家族やお友達が来られた時、オークランドでここが1番という景色はどこですか。」
私はオークランドで綺麗な景色が一望でき、自信持って案内する所は、何と言ってもマウントビクトリアです。その丘から見渡せる360度の景色は、どんなに疲れていても癒されるのではないでしょうか。多分、みなさんも何度も足を運ばれたことがあるかと思います。
実は今日の話はマウントビクトリアからほんのすこしだけ足を伸ばした所にあるノースヘッド。マオリ語でマウンガウイカ(ウイカの丘)は、オークランド港出入り口に位置し、ハウラキ湾や周辺の小島など360度の景色が眼下に広がっています。そこは、かつてマオリ族の要塞や住家、海岸線要塞などがあり、特にニュージーランドで最も大きな重要な防御要塞として、120年の長い歴史を刻んでいます。
歴史
1700年後半代に ヨーロッパ人がやって来る前までは、マオリ族は、火山灰の肥えた土地、豊かな海の幸に恵まれたマウンガウイカに住んでいました。要塞化された集落はマウントビクトリア・タカルンガにあり、丘の緩やかな斜面に庭を作り、魚用の干し台などを置いて生活していました。1840年代にオークランドが定められ、ノースヘッドは港として、船を先導する最初の水先案内港となりました。1878年に、「備えあれば憂いなし」という諺通りに、この地は防御に充てられることになりました。その後7年も経たない内に、ロシア海軍がせめて来るという噂に恐れて、実質的に防御施設として使用されるようになっていったのです。
ロシア軍の恐れ
1870年以来、当時はロシア帝国が驚異的な振る舞いを持つようになり、ロシア海軍が世界中の国々の港へ攻撃して来るという話が流れていました。1885年になると、ロシア軍が本当にやってくるというので、ニュージーランドの全海岸線には防御要塞が作られました。
ノースヘッドには3つの砲台が置かれ、一つは、北の砲台はランギトウトウ海峡の防御として、一つは、南の砲台はオークランド内港の防御として、三つ目は丘の頂上に砲台が設置されました。これらの要塞は最初に作った時、非常に急いでいたため実際に使用するには問題があり、再建を余儀なくされ、それ以降25年間というものは 公共事業部の指揮のもとで、丘の上にあった軍の兵舎で寝起きしながら、40人ほどの囚人が再建に労働を担いました。囚人らはコンクリートを練りレンガを積み上げて、トンネル、サーチライト場、地下空間(エンジン置き場、雑誌置き場)など作りました。要塞を近代化するようにと20世紀始めと1930年代には銃用の砲床が追加されたり、トンネル中のエンジンやサーチライトも新しくされました。今でも、ほとんどはその当時のままです。
ロシア恐怖の噂が世界の端っこに位置するニュージーランドまで来、大騒ぎしたなんて、今となっては一笑してしまいますね。お疲れ様と言いたいです。
砲台について
1900年までは、砲備として、8インチ(20.32cm)の砲台、3台が周到に用意されました。これは1886年当時としては、世界で最も優れた技術を持っていました。砲台その物は13トンあり、通常は地下で退避しており、大砲が発射される時の反動力で地下から浮上されるようにデザインされていました。そして、一旦地下に戻るとすぐ大砲が積まれ地面すれすれで次の発射を待つというもので、この格納式大砲は「消える大砲」とニックネームがつきました。世界中でほとんどなくなったこのような大砲は、今でも南の砲台に残っており見ることができます。とても貴重な遺産になりました。次のサイトをクリックすると、「消える大砲」の写真が見えます。
https://www.victorianforts.co.uk/art/northead.htm
ここで面白い話があります。20世紀の初め、練習にこの「消える大砲」を発射したら、振動でデボンポートの多くの民家の窓ガラスが割れて、大苦情が湧いたと言う話があります。
2017年7月に「遺産テレビ番組ショー」の1部として、この大砲がワイテマタ湾南東に向けて発射されました。その瞬間、朝から雷を伴った嵐にもかかわらず、空に虹がかかって見え、観客は発射後の余震で胸がゴロゴロ鳴ったと言っています。
その後のノースヘッド
第2次世界対戦では、ノースヘッドはオークランドの海岸線防御の行政センターの役割をし、主な連隊本部はこの丘にありました。新しいいくつもの兵舎も増築されました。が、1950年代の終わり頃までには、海岸線防御システムは終焉となり、ノースヘッドから軍隊は去って行き、ハウラキ湾の海上公園として保存されることになリました。海軍だけは、1996年までは訓練学校を運営するために丘の上に駐留しました。その後は、環境保全省管轄になりました。
このような歴史を知った上で、ノースヘッドを訪れたら、もっと感慨深いものがあるかと思います。トンネル内は暗いので、小さめのトーチを持って行ったらいいでしょう。
ピワカワカ