私は最初に住んでいた10エーカーのところも、今住んでいる42エーカーのところもファームと呼んでいます。しかし、家畜などで生計を立てているわけではない、いわゆるホビーファーマーなので立派なまさにファーム!という広さで生計を立てている真のファーマーの方々には笑われてしまうかもしれませんが、日本では密集した住宅地に住み、ファームでのお仕事がまったく未経験の私にとってはとっても大変で、印象的で、そして(今では)いい思い出になっている体験談をご紹介します。
羊の世話
ニュージーランドでの動物といえばやはり羊でしょう。白くてフワフワ、モコモコしていてかわいいというイメージではないでしょうか。私もそういうイメージを持っていたので、最初さわったときは期待はずれ!全然違う!毛は白くないし、触ると油っぽくて・・・もう一回さわりたいと思えませんでした。ちなみにアルパカはその点期待を裏切らず、モコモコでいつまでもさわっていたいと思える動物です。
最初の小さいファームで初めて羊を飼いました。一番最初にしたのはオスをお隣さんから借りてきて他の羊たちと同じパドックに入れ、次の春に子羊が生まれるように手配しました。
羊たち皆だんだんお腹が大きくなってきて順調だと思っていたのですが、一匹に異常を発見。お尻にまん丸に膨らんだ風船のような物が飛び出ています。お隣さんに電話すると、膣が反転して体から出てしまっているとのことで、手で押して直してあげなさいとアドバイスされました。手で押す??全然イメージができなかったのですが、とりあえずバケツに消毒液、手袋、その処置に使う道具を持ってかわいそうな羊の元へ行きました。
バレーボールの大きさくらいに大きく膨らんでしまっていて少し押したくらいではなんにもなりません。こういう手の作業は主人苦手らしく、「僕の手大きいし、腕も太いから・・・動かないように羊を押さえてるから・・・あとはよろしく。」と私に投げ出しました(笑)。こういうときは母は強しです。出産経験者として苦しんでいる羊をほっておけるわけがありません。手と腕を消毒し、恐る恐る膨らんだ膣を体の中に押し込みました。かなりの力で押さなくてはならず、私の上腕が羊の体内に・・・まさに子供のころに憧れた獣医さんになったみたいでした。何回かうまくいかなくてまた出てきてしまいましたが、何とか器具を装着して一件落着。時々同じ状態になる羊がいましたが、一度体験してしまえば怖くもなくスムーズに処置ができるようになりました。
そして春に無事たくさんの子羊が生まれました。私も子供達も大興奮!小さな子羊があちらこちらに走り回っているんですから。でも、生まれた子羊たちなぜかみんな真っ黒?!親羊の毛は白いのになぜなんだろうと本当に不思議に思っていましたが、親羊の顔は黒いのでそのためなのかもしれません。それならば親の白い毛を刈ったら体が黒いのかと思ったらそんなこともなく、未だに謎です。
その子羊の世話のひとつとしてしっぽの切除です。羊のしっぽは実はとっても長いんですよ。しっぽの毛もどんどん伸びるし、そうするとそこに糞がついて虫がつくので、とてもかわいそうなのですが取り除かなくてはいけません。方法としてはしっぽの付け根にきつめの輪ゴムをつけること。そうすると2週間くらいで自然に取れます。子羊といえどもフットワークはとても軽く、捕まえるのはとても大変でした。家族みんなで子羊にタックルをして泥だらけになって捕まえました。2週間後。パドックにたくさんのしっぽが落ちていて、愛犬が拾ってうちに持ってきました(苦笑)。
羊は牛と違って本当に世話をするのが大変です。毛を刈るのはもちろんのこと、寄生虫除去の薬をあげる、爪が伸びると歩きづらいので爪を切るなど。そのつど囲いに入れて捕まえ押さえつけておかないといけないのでかなりの重労働です。牛より頭が悪い(私の意見ですが)ので、パドックを移動するにも一苦労。牛は呼べば来るし、ゲートの場所を覚えているのですが、羊は人を見るとすぐ逃げ、パニック状態で走り回る・・・
一番大変で、嫌なお世話といえば、真夏に起こりやすいウジ退治。羊は毛が長くてフンなどがよくつくのでハエがいっぱい寄ってきます。牛のようにしっぽが長くないので追い払うこともできません。夏になる前に暑さ対策のためとハエがつかないように毛を刈ります。それでも被害をこうむる羊が出てきてしまいます。
最初に言っておきますが、ここからはちょっと気持ち悪いお話になります・・・心して読んでください(苦笑)
ハエがつくということは羊の体にタマゴを大量に産み、それがウジとなり、そのウジがまだ生きている羊の体を食べ始めるのです!!まさにホラー映画の状態です。ハエは嫌いな虫ですが、さらに大嫌いになりました。処置が遅いと死んでしまいます。被害にあった羊のことを思うと、今思い出して書いていますが本当にかわいそうです。
ウジ駆除に必要なのは、毛を刈るはさみ、手袋、薬。そうです。押さえつけて、毛を刈りながら手で取り除くのです・・・
主人とまた羊を押さえつけ、こればかりはどちらかに「あなたがやって!」投げ出せなかったので一緒に取り除きました。毛を刈るごとに大量の虫がウヨウヨ。鳥肌立ちっぱなしでの作業でした。一匹でも大変なのに、たくさんの羊を飼っているファーマーはいったいどのように対処しているんでしょう。いろいろなことに慣れた私ですが、この作業は慣れるということはこの先もないでしょう・・・
もうひとつ、羊で記憶に残る体験談。主人が留守中に一頭の羊が死んでいるのを発見。埋めないといけません。主人が戻ってくるまでそのままにもできましたが、やはり自分でできそうなことは人に頼らずとにかくやってみようということで、穴を掘り始めました。羊、結構大きい動物で穴もすっぽり入らなくてはいけないくらいの大きさで掘らないといけません。野菜畑作りのときにも書きましたが、ねんど土で有名なワイタケレ地区。掘るのも一苦労。大きさがよくわからないので、自分で入ってみて横になってみたり。大丈夫だと思って一回入れてみたらまだ小さくて、重い羊を穴から引きずり出してまた掘りました。雨の振る中2時間くらい掘り続けやっと埋められました。鳥やねずみの死骸も触れない私がよく頑張りました。自分で自分をほめてあげた体験です。
干し草作り
もうひとつファームに暮らしはじめてからの大仕事が干し草の束を作る作業です。作る過程は業者にお願いしています。大きなファームマシーンが3種類ファームにやってきて、草を刈る、乾燥させるために2回刈った草をひっくり返しかき混ぜる、干し草を束ねる作業を3日がかりで行います。よく乾かさないと保管している間にカビが生えて束がダメになってしまうので、この作業を行う日を決めるのは天気予報をよくチェックして慎重に決定します。草のコンディションや天候、皆がクリスマス前に仕事を終わらせたいと思うので、業者の人はこの時期本当に大忙しです。かなり前から予約を入れておかないといけませんでした。
私達の大変な作業は、この干し草を倉庫にしまうことです。42エーカーもあると本当にたくさんの干し草ができます。
昨年は全部で2500個もできました。これだけの数は倉庫に入りきらないので、マシーンが束ねているときにその干し草を買ってくれて自分たちでパドックから運び出してくれる人達を探さないといけません。幸い以前のオーナーさんが干し草を買ってくれた人達のリストを譲ってくれたので大変助かりました。買ってくれる人達は主に馬を所有している人達で(驚くほどいっぱいいます)、冬に備えて倉庫に蓄えて置くそうです。
それでもまだ、半分以上は倉庫に移動しないといけません。そこで、私達の得意な手段(笑)、植林のときのようにイベントのようにしてお友達にお手伝いしてくれないか声をかけました。力自慢のたくさんのお友達がじぶんの4WDの車とトレーラーを持って集まってくれました。
3、4人一組になってパドックに列になっている干し草の束をトレーラーに積んでいきます。束は結構重く15キロ以上はあるのではないでしょうか。それをトレーラーにたくさん重ねます。そのためには自分よりも高い位置に束を投げ、乗せることになります。多くてもトレーラーに20個くらいしか乗らないので暑い日差しの中、本当に時間と手間のかかる作業です。
花粉症を英語で「Hay fever」といいます。Hayは干し草のことで、ご想像のとおり自分も含めてたくさんのお友達がアレルギー反応が出て大変でした。目が真っ赤、くしゃみは止まらない。とっても申し訳なかったです。
心強い友人たちのおかげで無事にすべての束を倉庫にしまうことができました。倉庫の中は5メートル以上ある天井に届くくらいいっぱいの干し草が積まれました。重労働の後のビールとBBQ、みんなで美味しく楽しく飲み食べできました。
次の日は全身筋肉痛で動けませんでした。次にこの大変な作業をするときいったい何人のお友達が集まってくれるでしょうか・・・
これからもいろいろな初体験を経験していくでしょう。大変なことが多いですが楽しみです。
- あやの
- オークランド在住17年目の主婦。ガーデニング、キャンプ大好きアウトドア人間。
- キウイの旦那と3人の息子に囲まれ、彼らに鍛えられる毎日を過ごしている。