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第5回 おいしいお肉。牛タン、レバ刺しはいかが?

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42エーカーの大きな牧草地。ここに引っ越したのは自然に囲まれてのびのび暮らしたいというのも大きな理由のひとつですが、家畜を飼って肉の自給自足をしたいと思ったからです。自分たちで飼育した家畜ならば、どのように育てられ、何を食べ、もし薬を上げるときがあっても何を投薬したかなど詳しく把握しているので、安心して食べられるのが大きな魅力です。また、子供たちにもスーパーの切り身のお肉ではなかなか実感がわかないであろう、お肉はどこから来てどのようにできるのか、そして感謝の気持ちを、言われたからではなく自分の体験をとおして感じてほしかったからです。

以前住んでいた10エーカーの家では3頭の牛と6頭の羊を飼っていました。今のところは、フェンスがまだ羊に対応できる物ではないので(3本のワイヤーのフェンスで2本に電気が通っている物。我が家全員、犬も含め電気でビビッと感電体験済み)、とりあえず牛だけを飼うことになりました。

生後3ヶ月、6ヶ月、10ヶ月の牛、計20頭をブリーダーに注文し、配達してもらいました。大きなトラックに詰め込まれ到着した子牛たち。ドアを開けると皆飛び出すようにトラックからおりてきました。この子牛たち。第一印象はなんて小さくて、細い子牛なんだろう・・・大丈夫?でした。不吉な第一印象があたり、一週間後、一頭の子牛が死んでいるのを発見。ブリーダーの牧場のコンディションが悪かったようで、子牛たちは寄生虫に苦しまされていたようなのです。すぐに虫を駆除する薬をあげなくてはいけないのに、牛を集め囲っておき、投薬するという設備がまだ我が家にはありませんでした。急遽、ネットで検索しだいたいのデザインを決め、2日で囲いを作りました・・・が、きちんとリサーチして作る時間がなかったので、投薬するときにいろいろな問題が・・・

まずはうちのファームに来たばかりで慣れてない子牛たち。見慣れない囲いに入るはずがありません。柵の隙間から逃げる、柵をこわして逃げる、ゲートに頭突きして逃亡というパニック状態に。

囲いを直してもう一度チャレンジ。今度は囲いに入ったのはいいのですが、おとなしく口から投薬させてはくれません。四苦八苦しているところに、何も知らないお友達がバイクに乗って登場。主人と彼で、牛の首をつかまえて、おさえつけたり、まさに牛対人間のレスリング状態に・・・。私はこの状況をみながら大爆笑していました。全身泥まみれ、フンまみれになりながら何とか20頭に薬をあげられ問題解決。キウイ男、剛腕の持ち主です(笑)。

牛1

好奇心旺盛な牛たち

健康な牛ならば、本当に手間がかかりません。牧場を4つに分け、一週間ごとに次のパドックに移動させます。牛の体内にいる寄生虫は牛の体外では1ヶ月以内に死んでしまうそうで、1週間ごとにパドックを移動すると次に最初のパドックに戻ってきたときには虫は死滅しているので、きちんとこの方法で管理していれば虫の駆除の薬を使わずにすむそうです。友人のファーマーに教えてもらいました。初心者の私たち。たくさんの経験豊かな友人のアイデアと助けに支えられているなあと日々実感しています。

あとは、きれいな水をいつも水桶に用意してあげれば、本当に牛たち、草を食べるだけでびっくりするくらい大きくなります。時々干し草などを私があげるので、最初は私を見ると逃げてしまっていた牛たちも、今では呼べば走ってきます。牛の面白いところは、すぐ何にでも興味を持ち、私が何か牧場でしていると集まってくるところ。車が停めてあれば窓ガラスはなめる、プラスティックやワイヤーなどを見ると食べてみずにはいられないみたいです。牧場内にある小さな小屋を覗き込み、頭突きで窓ガラスを割ったことも。そんなかわいい牛ですが、目的は食用。私たちがしてあげられることはおいしい草と水をあたえ、できるだけストレスを感じない暮らしをさせてあげることです。そうして牧場に来てから約1年。10ヶ月だった子牛が2才になり牛肉となるときがきました。

牛2

牛の解体、ホームキル

牛を解体するプロがいます。ホームキルと呼ばれています。その人はトラックでいろいろな道具や、牛をつるすクレーンなど必要な物をすべて持ってファームにやってきます。解体してほしい牛だけを他の牛と別のパドックに隔離しておきます。牛もいつもと違う雰囲気を感じるようで、離そうとしても寄ってきたり、いつもよりモーモーないたり。この時はさすがに心が痛みます。
ホームキルのおじさんが持参の銃で頭を撃ちます。追いかけまわしたりもせず、必ず一発で決められるので牛も最小限のストレスですみます。

解体作業。生き物好き、解剖や生物の授業が好きだった私。この作業は本当に興味深く、ホームキルのおじさんにもいろいろな質問をしながら作業の見学をさせてもらいました。おじさんも親切に質問に答えてくれ、これはどのように調理したらおいしいよ、などといろいろ勉強になります。

「どの内臓の部位がほしい?ぜんぶ?」大切に育てた牛。ありがたく無駄なく食したいので、全部!といいたいところですがどう処理したらいいかわかりません。慣れるまで、心臓、レバー、キドニー、タンをもらうことに。そうしたら、「はい、どうぞ!」と、その場で切ったそのままの内臓を渡され・・・それも動物が大きいだけあって内蔵も巨大で、下処理も一日がかりの作業です。今は慣れましたが、一番最初のときは触るのもビクビクしながらで、特にタンはもう一体どうしたらいいの、これ!というくらい見た目がそのままで気持ち悪かったのを覚えています。

さあ、食べよう!

ディナー

そんなグロテスクな作業も、今ではおいしい物大好きな私にはなんてことのない作業になりました。我が家では私だけがおいしく食べるレバー。いろいろ違う方法で調理しても、あるときは隠すようにビーフシチューに入れたりしましたが(おこられた・・・)全然だめでした。絶対に気持ち悪い、人間じゃないって言われるのでこっそり一人でレバ刺しで食べました(笑)。レバーは私と我が家のもう一匹の女の子の愛犬でおいしくいただいています。

心臓。主人が以前調理した方法を今でも覚えています。心臓の中をくりぬき、そこにソーセージ用のひき肉と野菜、香辛料を混ぜた物を詰め込み、オーブンでローストしました。テーブルの真ん中に、どーんと全長20センチの見た目が心臓そのままのものが鎮座していました(笑)。目をつぶって食べればとてもおいしかったのですけどね。

私が今回心臓の調理に挑戦することに。スウェーデン人の友人にヘラジカの心臓は燻製にして食べるんだと聞いたので、私も燻製にしてみることにしました。塩水に一晩漬け込み、ブラウンシュガーをまぶして燻製器でいぶすこと1時間30分。これが思った以上においしくできました。心臓の燻製2つも食べられないので、今度はそれをスライスして、乾燥させジャーキーを作りました。これがまた大成功。ビール好きの私と主人、お友達もおいしくいただきました。

そして、大好物のタン。やっぱり、炭火で焼いて塩とレモンでいただくのが一番。タンを食べたことのなかった主人も今では大好きです。子供は苦手なのですが、苦手なままでずっといてほしい(笑)。ビールと一緒に食べたいなあ。

一頭の牛を解体してもらうと、100キロ以上の牛肉になるので我が家の巨大冷凍庫(子供3、4人すんなり入ります)がいっぱいになります。これから、豚、羊、ウサギなどなども食用に飼育しようと思っているのですが、冷凍庫、どうしましょう・・・

ジャーキー作り

あやの
オークランド在住17年目の主婦。ガーデニング、キャンプ大好きアウトドア人間。
キウイの旦那と3人の息子に囲まれ、彼らに鍛えられる毎日を過ごしている。