私達が普段「こんにちは」と言葉を交わしたり、お辞儀をしたり、あるいは握手したりと、状況に合わせて挨拶しているように、マオリの挨拶にも幾つかの方法があります。ここでは代表的な三通りの挨拶の方法を紹介します。
ホンギ

© Fraser Clements
Hongi(ホンギ)は、額と鼻を擦り合わせて交わす挨拶です。Marae(マラエ:マオリ集落の中枢をなす集会所)での集まり事や、Powhiri(ポフリ:歓迎式)、Tangi(タンギ:葬式)などの儀式では、必ずホンギで挨拶を交わします。その理由は、顔をまじかに近づけて同じ空気を吸う事で、客人は訪問先の土地の生命の息吹を共有し、その土地(部族)の人として迎えられるという、古くから伝わる慣習にあります。ホンギは男性だけがするものとは限りません。相手が女性でも、またマオリでなくても交わされます。
儀式だけでなく、日常でも、特に男性の間で、相手に対する尊敬の念を表し、ホンギが交わされる事もあります。右手で握手しながら左手をお互いの肩に置き、目を閉じてがっちりと額と鼻を擦る姿は真剣そのもので、ある種の緊張感が漂います。
"Kia ora"

© Sara Orme
マオリ語の代表的な挨拶と言えば、何といってもKia Ora (キィオラ) です。朝昼晩いつの時間でもKia Ora、それからありがとうの意味でも使います。テレビやラジオのニュース番組の冒頭で使われる程、NZの社会の中で一般化しています。が、実はこのKia Oraは、昔から挨拶として使われていた訳ではありません。イギリス等なからの入植者が、 ‘for health’ (皆の健康を祈って) と乾杯の音頭を取るのを真似して、同じ意味のKia Ora が使われたのが始まりです。それまでは、Tēna という言葉が挨拶として使われていました。今でもお年寄の中にはKia Oraと言わず、Tēnāと言う人もいます。
"Tēnā koe / korua / koutou"
PōwhiriやTangiといった儀式や、公の場でのかしこまったスピーチでは、Kia oraではなくTēnāを使います。「テーナー」とゆっくりと発音し、そしてその後に、話している相手が一人の場合は、Koe、二人の時はKōrua, 三人以上の場合はKoutou を続けて言います。
Tēnā Koe | 相手が一人の場合 |
---|---|
Tēnā Kōrua | 二人 |
Tēnā Koutou | 三人以上 |
また相手が多数である場合、Tēnā Koutou の後に全員という意味のKatoa をつけて、Tēnā Koutou Katoaと言います。さらに、Tēnā Koutou Tēnā Koutou Tēnā Koutou Katoaと三回繰り返して強調するのが一般的です。
メールや文書を書く場合も同じです。くだけた感じの時は、Kia Ora、公式の文書を書いたり相手を敬う気持ちを表したい場合は、Tēnā Koe/ Kōrua/ Koutou ( katoa ) を用います。
文末は、敬具やかしこで結ぶように、相手が一人の場合は He Mihi, 相手が複数の場合は、Ngā mihi で結びます。
いかがでしたか? 出来れば、読むだけでなく実際口に出して練習して、実践に備えましょう!