注目のTPP対応 現実的政策で経済成長を安定的に維持できるか
旧与党が勝利しておきながら結果的には政権交代に至るという、意外な展開を見せた今回のニュージーランドの総選挙は、日本企業の注目度も高く、日本のメディアでも想定されていた以上に取り上げられました。特に日本で注目されたのは、関係政府間で改めて合意に至ったTPP(環太平洋パートナーシップ)協定へのニュージーランドの対応が今後どうなるのかということだったと思います。
前国民党政権では、関係11カ国の中でもニュージーランドは最もTPPに前向きな国の1つで、日本にとってみれば一番の応援団的存在でした。しかし、TPPに反対と公言していた党が連立して政権を取ったことで、TPPの早期発効に障害となるのではという懸念が日本側で一気に噴出したように思います。仮に、本当にニュージーランドがTPPに加わらなくなれば、二国間の関係にも大きな悪影響が懸念されますが、新政権はこれまでの主張とTPPを両立する方向を探っているようにも見受けられます。
一方で、今回の政権交代によって政策的に大きく変わるのはむしろ内政面とみられ、これ自体が直接通商にもたらす影響は、あまり大きくないかもしれません。しかし、さまざまな政策の組み合わせの結果として、景気が良くなる、悪くなるということはありえます。まずは新政権が具体的にどんなことをしようとしているのかを見極める必要があります。
労働党など与党が打ち出している政策そのものにコメントできる立場にはありませんが、いずれにせよニュージーランドの現状に合う最善の策が探られていると認識しています。ニュージーランドの経済は他の先進国などとは様相を異にし、比較的高く、かつ、かなり長期にわたり安定的に成長してきました。期待するのは、こうした理想的な経済環境をうまく維持・向上していってもらいたいというところにあります。
ニュージーランドは、日本からも、以前より経済的な注目を集めているように思います。その大きなきっかけになったのがTPPでした。2015年の政府間合意をきっかけに、例えば当所の海外ブリーフィング申込件数が急激に増えました。ご承知の通り、TPPそのものは紆余曲折を経ていますが、日本企業からの対ニュージーランド関心が大きく失速した感はありません。それも、景気が安定しているという実態があるからだと思います。今のニュージーランドは十分底力があり、現実的で適切な政策展開が進められていけば、今後とも良好な経済が続いていくのではと考えています。
日本貿易振興機構JETRO
- 経済産業省が監督官庁を務める独立行政法人で、諸外国との貿易、直接投資など通商関係の進展を図る貿易促進機関。
- 海外調査や情報提供も行っている。
- 林さんは2014年から所長としてオークランド事務所に駐在。
- JETROオークランド事務所
- https://www.jetro.go.jp/jetro/overseas/nz_auckland/