今まで、子供の頃から複数の言語を習得する環境にあった人、大人になってから言語を習得した人について取り上げましたが、今回は、結局バイリンガル教育はいいのか悪いのかについてお話ししたいと思います。
バイリンガル教育の良し悪しは、ひとそれぞれ価値観も環境の違いもあるので、これは僕の個人的な意見になりますが、バイリンガル教育のメリットとデメリットを考えた場合、メリットの方が多いように思います。何事も白か黒か、0か100かではありません。メリットがあればデメリットもある。それを考慮に入れて子供にとってメリットが多いと思えば行えばいいし、デメリットの方が多いと思えばやめればいいと思っています。ただし、コアな言語(第一言語)を中心にしっかり確率させる必要はあると思います。
そこで、僕の考えはすべての言語を同じウエイトで同時進行ではなく、コアな言語(第一言語)をしっかり習得させて、その上で第二、第三言語を追加していくのが良いと思います。これにより、セミリンガルの心配もなくなるし、高度な会話や学習も可能となります。また、仕事のうえでもコアの言語の環境下なら問題ありません。子供も、言語に関する引け目もなくなるでしょう。また、アイデンティークライシスになることもないでしょう。
第一言語をしっかり確立したうえで、他の言語を習得させるかは、それぞれの価値観と環境によると思います。ただ、子供の価値観と親の価値観は違うでしょうし、自分の価値観が正しいとは限らないので、バイリンガル教育に限らず、なんでもとりあえずやってみればいいと思っています。それで、うまくいかないと思えばやめればいいだけのことです。“やらずに後悔するよりは、やって後悔した方がいい”と思っています。
ただし、このバイリンガル教育は子供本人が決めるものではないのが少々ややこしいことです。本当のバイリンガルに育てるためには、子供がまだ自分の判断で物事を決められない時期から始める場合が多いので、親の判断で決めることになります。幸い子供が赤ん坊の時期は子供本人は文句を言わないので楽ですが(笑)。たとえ子供が判断できたとしても、子供は楽な方へ流れていくので、ほっておくと恐らく一か国語だけになってしまうでしょう。
また、子供にとって言語習得という大切な時期に他の言語を習得させるのに時間を費やすことになるので、うまくいかなければ途中でやめればいいという単純なものではありません。なぜならひとつの言語習得に費やした時間の分、他の言語の習得の時間が減ってしまうからです。それによって、デメリットでも述べたように、セミリンガルになってしまったり、言語の発達が遅れて思考の発達が遅れたりする可能性があるからです。(この言語の発達の遅れというのは、一時的なものですぐ追いつくという説が今は一般的なようです。)
一見、バイリンガル教育はギャンブルのように見えますが、ギャンブルでもスキルを磨けば勝つ確率が上がるように、このバイリンガル教育もうまくやれば成功する確率が上がるでしょう。
子供本人にとって子供のうちは、バイリンガルであるメリットはあまり感じないでしょう。むしろ、それぞれの言葉が、他の同年代の子供に比べて遅れる分、デメリットの方を感じる場合が多いのではないでしょうか。
後編に続く