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弁護士解説:技能移民カテゴリーでの移民法の改定の概要・方向性とエッセンシャルワークビザの変更案について

 4月19日に発表された移民法の改正内容およびエッセンシャルワークビザの変更案について、各種ビザの申請手続きなどを行っている「プレスティージ・ロイヤーズ弁護士事務所」に解説していただきました。

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 2017年4月19日、マイケル・ウッドハウス移民大臣は技能移民(SMC = Skilled Migrant Category)での移民政策の改定を発表しました。今回の発表で明らかになったのは、ニュージーランドの移民政策における変更点の概要および方向性で、移民局は2017年6月に具体的な情報を発表する予定であると述べています。新政策は同年8月14日施行となります。

 また、移民局は同日、「エッセンシャルワークビザ」といわれる、ワークビザについても変革を加える計画であることを発表しました。新政策は8月に施行される予定です。

移民政策変更の目的

 ニュージーランド政府および移民局は、移民政策をニュージーランド経済の発展のための方策と位置付けており、今回の動きは移民の技能の多様化を図ることで労働市場への貢献度を向上させるための包括的な改定であるとうたっています。

 今回の変更のうち最も大きな改革は、技能移民のカテゴリーに収入面での要件が導入されるという点です。規定の年収額を含む細かい内容については、1.収入の項目にまとめてありますのでご覧ください。そのほか、さまざまな点において変更が加えられることが発表されましたので、以下に情報を整理します。

1. 収入

 技能職の定義に「年収」という概念が加えられました。移民局では二段階の年収設定をしていますが、年収がNZ$48,859に満たない場合は、技能移民として申請できないということが明示されています。年収が設定された額を上回っているかどうかがこのカテゴリーを通してレジデント・ビザを目指す場合の最低条件となります。

 今回、年収での基準を導入したことに伴い、移民局は年収の中央値の1.5倍以上の収入(NZ$73,299以上)がある場合、これまで技能職業の定義に入っていなかった仕事に就いている移民にもレジデント・ビザ申請の門戸を開くと発表しています。

 なお、今回基準値として発表されたNZ$48,859は、現在のニュージーランドの年収金額の中央値で、この額は毎年、所得の変動に基づき更新されます。

  • 年収がNZ$48,859(時給NZ$23.49)以上の場合、ANZSCO* スキル・レベル1、 2および 3の職業に対するポイントが認められ、ポイントが申請できる
  • 年収がNZ$73,299(時給NZ$35.24)以上の場合、ANZSCO スキル・レベル1、 2および 3以外の職業についている場合でも、職業に対するポイントを申請できる可能性がある
  • 年収がNZ$97,718.00(時給NZ$46.98)以上の場合、ボーナスポイントが付与される

※ANZSCO(Australian and New Zealand Standard Classification of Occupations)

 スキルを基に職業を分類しており、ニュージーランドで技能移民としてレジデント・ビザを申請する場合は、スキル・レベル1〜3に該当する職業であることが求められます。
http://www.abs.gov.au/ausstats/abs@.nsf/Latestproducts/1220.0Search02013,%20Version%201.2

2. ポイント

 ニュージーランドの移民政策は「ポイント・システム」と呼ばれ、レジデント・ビザの申請の第一段階のEOI(Expression of Interest)では、合計ポイント160以上が求められます(2017 年4月現在)。

 今回の改定では、技能、職歴、年齢等で計上できるポイントが変わること、これまで認められていたポイントの一部が廃止されることが発表されました。現時点では方向性は示されたものの、具体的なポイントが提示されておらず、ポイントについては6月に予定されているニュージーランド移民局からの追加発表を待たねばならない状況です。

ポイントが上昇する要件
  • 技能職の経験に対するポイントは過去よりも高くなるが、対象はANZSCO スキル・レベル1、 2および 3についてのみである
  • NZでの職務経験が12カ月かそれ以上の場合ポイントが付与されるが、2年以上の職務経験に対する追加ポイントはない
  • 30〜39歳の申請者に対する年齢ポイントを厚めにする
  • Level 9もしくは10の、大学院卒(マスターもしくはドクターの学位)で、認可されている大学での資格に対するポイントは高くなる
  • パートナーの資格に対するポイントが認められるのは、学士レベルかそれ以上、もしくは認可されている大学で取得した大学院(レベル9かそれ以上)の資格に対してのみ
 
ポイントがなくなる要件
  • absolute skills shortageと呼ばれる人材不足が著しい分野の資格に対するポイント
  • 成長が予測される分野での技能就職、職務経験および資格に対するポイント
  • ニュージーランド国内に近親者がいることに対するポイント
 
その他、ポイントに関する変更

 「ジョブオファー(内定)」と就業中の仕事との間のポイント差がなくなります。現行政策では、ジョブオファーに対しては50ポイント、就業中の場合(12カ月以上の契約で)は60ポイントが付与されていましたが、同数になる予定です(具体的な数値は未発表)。

3.変更のない要件

 今回の移民局の発表によると、「健康」、犯罪歴等を問う「品格」、「英語レベル」に対する要求はこれまでの政策を継続するということです。

変更の可能性や検討中の要件

 2016年10月以降、EOIの通過ポイントは160と設定されていましたが、このポイントも変更となる可能性が示唆されています。決定するのはニュージーランドの移民大臣で、時事の必要性に応じ通過ポイントが変わる可能性があるというものの、具体的な数値は示されていません。

 また、8月14日の新政策への切り替え時点で、レジデント・ビザ申請中の各段階にいる申請者に対する処遇についても現在移民局で検討中ということで、ポイントの詳細と合わせて、6月に予定されている変更内容の詳細の発表が待たれます。

エッセンシャルワークビザの変更案の概要

 エッセンシャル・ワークビザとは、ニュージーランドにとって重要な職務技能を持つ移民に対して発給される短期滞在型のワークビザです。技能移民のレジデント・ビザ申請で条件となった「収入レベル」という概念を、エッセンシャル・ワークビザでは、スキル・レベルの判断基準にするというのが、改定案の骨子です。

 収入レベルによりスキル・レベルが低いと見なされた場合、ワークビザの有効期限は3年が上限となり、同時に

  • そのビザの有効期限終了後、ワークビザの申請までに一定の期間を置く必要が発生する
  • 家族をニュージーランドに連れてくる場合、家族は独自にワークや学生ビザを取得せねばならない

などの項目も変更案の一部に入っています。

 なお、スキル・レベルの指針となる年収額は、今回の発表では提示されておりません。また、ビザの年数に上限が発生するのは、新政策切り替え後、ビザの更新をした時点からで、現行のワークビザについては影響がありません。

 今回の発表は「改革案に対し広く公から意見をきくため」のもので、下記リンクより意見を提出できます。締め切りは2017年5月21日午後5時です。
http://www.mbie.govt.nz/info-services/immigration/consultations/proposed-changes-to-immigration-policy-settings-suite-of-proposed-changes-essential-skills-visa

 今回発表された技能移民でのレジデント・ビザ申請に関する移民方の改定、およびエッセンシャルワークビザの変更案等に関連し、ニュージーランドでレジデント・ビザやワークビザの取得を目指している方は、より正確な情報・対応方法等を得るために、移民ビザを扱う弁護士事務所等にご相談することをおすすめします。

情報:New Zealand Immigration

https://www.immigration.govt.nz/about-us/media-centre/news-notifications/skilled-migrant-category-changes
https://www.immigration.govt.nz/about-us/media-centre/news-notifications/review-temporary-migrant-work-settings
 

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