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第1回 スクールイベントにみるニュージーランドのおおらかな学校教育

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2月のある日、ロトルアのマルフロイ小学校で「デュアスロン」というスクールイベントが行われました。トライアスロンは水泳・自転車・ランニングの3種目ですが、デュアスロンは水泳なしの2種目です。
子どもたちの学校行事への参加の仕方に、ニュージーランドの学校教育のおおらかさが感じられます。

はじめまして。ロトルアに住むSeikoです。

20年以上前、新婚旅行でニュージーランドを訪れ、空の青の濃さと深さに驚きました。空の色が胸にすっと入り込んできて、体が清涼感あふれる青でいっぱいになるような感覚を覚えました。そんな美しい空の下で暮らしたいという夢がかない、ロトルアで暮らしはじめて19年目になりました。

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1997年に移住して、ニュージーランドの美しい自然にあふれた環境、人々のおおらかさと親切さを目の当たりにするにつれ、こういう環境で育つ子どもは幸せだろうなあと感じました。
できれば私たちもニュージーランドで子どもを育てたいと思いました。

念願かなって生まれた娘は、現在10歳。ニュージーランドのPrimary Schoolの最終学年Year6に在学中です。
私自身も、娘を育てることで、いろんな人や機会やニュージーランドの制度にも助けられ、たくさんのことを学びました。生活や仕事を通じて、ニュージーランドの子どもの育て方、幼稚園や学校のシステム、教育方法などもだんだんとわかってきました。

日本で自分が受けてきた教育とニュージーランドの教育には、少なからず違いがあるように感じます。ラグビーワールドカップで史上初の連覇を成し遂げたオールブラックスの強さの秘密も、小さい頃から受けてきたニュージーランドの教育に関係があるのではないかと思うようになりました。

ニュージーランドの学校と学年のしくみ

ニュージーランドでは、子どもは5歳になると小学校に入学します。日本のように、4月に入学式があって一斉に学校がはじまるのではなく、5歳の誕生日を迎えた子から随時小学校に通い始めます。5歳になってすぐ就学してもいいし、次の学期から学校に通い始めてもかまいません。学校と保護者が話し合って、その子どもにとって良いタイミングで、学校に通い始めることができます。遅くても6歳の誕生日を迎えるまでに学校に通い始めればよいことになっています。

6歳から15歳までの子どもは、SchoolかKuraかHome Schoolのいずれかの教育を受けなくてはなりません。
16歳以上は義務教育ではありません。16歳以上の生徒たちは、大学やポリテクなど高等教育機関に進学したい人だけが、さらに高校で勉強を続け、大学の入学基準となるNCEA(National Certificate in Educational Achievement )という国の認めた資格を取得します。

5歳で小学校に入学し、小学校はYear1~Year6(5歳から10歳)までの6年間。
中学校(Intermidiate School)は、Year7~Year8(11歳から12歳)の2年間。
高校(High School/ Secondary School)には、Year9~Year13(13歳から17-18歳)までの5年間、基本的には通います。
高校の中には、Year7~Year13までの7学年を受け入れている学校もあります。

ニュージーランドの小学校イベント「デュアスロン」

2月某日、真夏らしからぬ肌寒い曇天の下、ロトルアのマルフロイ小学校でスクールイベントが行われました。
Year3 からYear6までの子どもたちが参加する、トライアスロンならぬ「デュアスロン」というイベントです。トライアスロンは水泳・自転車・ランニングの3種目ですが、デュアスロンは水泳なしの2種目です。
子どもたちが3人1チームとなって、第一走者ランニング→第二走者自転車→第三走者ランニングで、チームとしての速さを競います。

拡声器を持った先生の「よーいドン」の掛け声で、第一走者としていっせいに走り出す子どもたち。どの子もとても楽しそうです。
足が速くて走るのが得意な子は、真剣そのものの顔をしています。走るのが苦手な子もニコニコしています。
こういうスクールイベントの機会にいつも思うのですが、ニュージーランドの子どもたちは、いつもとてもいきいきした表情をしています。
楽しくて仕方がない、という気持ちが伝わってきて見ている私もうれしくなります。

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勝敗はあまり関係なく、みんな楽しんで参加しています。「絶対、勝つぞ」と必死の形相で走っている子もいれば、クラスメートや保護者の声援に対し、満面の笑顔で手を振りながらスキップするように走っていく子もいます。

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第一走者からタッチされた第二走者の子どもたち。自転車に乗って疾走します。芝生が湿っているため、中にはなかなか前に進まない子や自転車ごとひっくり返ってしまう子もいます。それでも、みんな楽しそうです。

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走っている子も自転車に乗っている子も、半数以上が裸足です。校庭も公園も家の庭も、芝生のところが多いせいか、ニュージーランドの子どもたちはいつでも裸足でかけまわっています。雨の日でも裸足です。

おおらかな学校教育。

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ニュージーランドの幼稚園や小学校などの先生たちは、おおらかです。もちろん、遅刻はしてはいけない、決められた時間どおりに勉強するなど、スクールルールには従わないといけませんが、ルールの範囲内であれば、子どもたちが自分の意思で、するかしないかを決めてもよい場合が日本よりも多いかもしれません。
例えば、このスクールイベントでも、走るのも自転車も得意ではなくて、デュアスロンに出場したくない子は、出場しなくてもかまいません。そういう子は、クラスメートが頑張っているのを見て応援しています。それでも先生にしかられたりはしません。
また反対に、走るのも自転車も得意な子は、3人チームでなく、一人で三種目すべてをこなすことも認められています。そういう子は目印のために、色の違うゼッケンをつけています。

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自分は、先生たちを手伝ってイベント運営側のサポートをしたいという子は、競技には出ずに、カメラマンやコース誘導係りとして、参加しています。カメラマンなのに、クラスメートが走っていると大きく手を振って応援するので、そのあいだ写真は撮れないこともありますが、それもまたご愛嬌。

このように、何かスクールイベントがあったときに、参加の方法は一通りではないのがおもしろいです。
ルールの範囲内であるとはいえ、学校行事に自分なりの参加をすることが認められることは、日本で育って日本の教育を受け、また日本で教育に携わる仕事をしてきた私にとっては最初は驚きでもあり、大変興味深いことでした。

そして何よりも素敵なのは、どの子もこのデュアスロンをとても楽しんでいたことです。
子どもたちの笑顔をたくさんみられた日であり、おおらかなニュージーランドの教育を再認識した日でもありました。

参考ウェブサイト:

ニュージーランドの学校のしくみについての「親のための実用的な知識」が以下のニュージーランド政府のサイトに載っています。
parents.education.govt.nz
上野清子(Seiko Ueno)
新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
娘一人。
留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。

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