ニュージーランドでは、高校から大学やポリテクニックまで、コースや資格のレベルが国で統一されているのです。
秋がだんだん深まり、木々の葉が少しずつ色づいて美しいロトルアです。
高校でのNCEA資格を取得し、大学に入学する。
さて、第7回、第8回のコラムで、ニュージーランドの高校で取得する資格とそのレベルについて書きました。今回は、その続き、大学やポリテクでの資格のレベルについてお伝えします。
- ニュージーランドでの高校での資格取得方法は、
- ■ ニュージーランドの高校では、NCEAという国の認めた統一資格を Level 1からLevel 3まで取得できる。
- ■ 高校で取得した資格のレベルと単位数が、入学希望する大学やポリテクニックの入学条件を満たしていれば、希望の大学やポリテクニックに入学できる。
- というシステムになっています。
- [ニュージーランドの高校でNCEA Level 3までの修了資格を取っていない留学生が、ニュージーランドの大学やポリテクニックに入学したい場合は、IETLS(アイエルツ=International English Language Testing System)という英語の試験を受け、入学したい学校から求められているポイントに達した上で、必要に応じてファンデーションコースに通ってから、メインストリーム(本科コース)に進むという方法もあります。]
ニュージーランドの大学とポリテクニックとは?
- ニュージーランドの大学はすべて国立大学で、以下の8大学があります。
- Auckland University of Technology(AUT- オークランド)
- Lincoln University(リンカーン大学- クライストチャーチ)
- Massey University(マッセイ大学- パーマストンノース)
- University of Auckland(オークランド大学- オークランド)
- University of Canterbury(カンタベリー大学- クライストチャーチ)
- University of Otago(オタゴ大学- ダニーデン)
- University of Waikato(ワイカト大学- ハミルトン)
- Victoria University of Wellington(ビクトリア大学- ウェリントン)
また、ポリテクニックやインスティチュートオブテクノロジーと呼ばれる国の認めた専門学校は、ニュージーランド国内に18校あります。(2016年5月現在)
ポリテクニックとは、主として職業訓練やプロフェッショナルな専門技術などを教えてくれる専門学校です。最近は、大学と同じコースがあり、同じ資格を取れるところもあります。
これらの大学やポリテクニックには、さまざまな分野で、いろいろなレベルのコースがあります。
すべての大学にすべての分野のコース(学部)があるわけではなく、例えば、医学系コースならオタゴ大学、パイロット養成コースならパーマストンノース大学などというふうに、大学によって設置されているコースがある程度決まっています。
高校から大学まで、資格レベルは全国統一されている!
私がニュージーランドで教育や学校に携わる仕事をしてから、知って驚いたことがあります。それは、高校から大学やポリテクニックまで、コースや資格のレベルが国で統一されていることです。
前にもお伝えしましたが、ニュージーランドの高校で取得するNCEAの資格には、Level 1から Level 3まで3段階のレベルがあり、通常はLevel 1をYear11(高校1年生)、Level 2をYear12(高校2年生)、Level 3をYear13(高校3年生)で取得します。レベルと学年は必ずしも一致している必要はありません。
高校ではlevel 3までの資格が取得できます。ポリテクニックには、Level 2やLevel 3のコースもありますし、Level 4、level 5、Level 6と上のレベルのコースもあります。高校でLevel 3まで取得していなくても、ポリテクニックなどでやり直すことも可能です。
ニュージーランドの高校から大学まで、国に認められた資格のレベルは、高校から一貫性があり、統一されているのです。
ニュージーランドの資格レベルのフレームワーク
高校から大学まで、ニュージーランドの学校で得られる資格は、NZQF(New Zealand Quoalification Framework)という資格識別をされています。
ニュージーランドの高校、ポリテクニック、大学で得られる資格は、簡単なレベルから難しいレベルまで、以下のように資格のフレームワーク(骨組み)が決まっています。
- Level 1
- Certificate
- Level 2
- Certificate
- Level 3
- Certificate
- Level 4
- Certificate
- Level 5
- Dipoloma
- Level 6
- Dipoloma
- Level 7
- Bachelor/Graduated Dipoloma
- Level 8
- Bachelor Honours Degree/ Postgraduate Diplomas and Certificates
- Level 9
- Master’s Degree
- Level 10
- Doctoral Degree
一般的には、高校でLevel 3まで修了し、そのあとはLevel 4のCertificate(サティフィケート)のコースから順に、Level 5、Level 6と難易度が高くなっていきます。
Level 7のBachelor(バチェラー)が、日本でいう大卒(学士)の資格にあたります。
大学やポリテクニックで受講する「コース」が日本の大学や短大でいう「学部学科」のようなもので、すべてのコースにレベルが設定されています。
必ずしも、Level 4から順番に受講しなければいけないことはありません。入学条件を満たしていれば、高校を修了してすぐにBachelor Level 7のコースに入ることも可能です。しかし、例えばLevel 7のコースの入学条件に、「同じ分野のLevel 5を修了していること。」ということが決まっているような場合もあります。
どの学校で取得しても同じレベルの資格は同じ評価。
また、ニュージーランドのポリテクや大学では、コース名とレベルの同じコースであれば、どの大学でもどのポリテクでも学ぶ内容が統一されているので、それに伴って、どの大学、ポリテクニックでも同じ資格は同じ評価となります。
例えば、Diploma in Business (ディプロマインビジネス)Level 6というコースを修了すれば、どのポリテクニックでも大学で履修したとしても、ニュージーランドのDiploma in Business (ディプロマインビジネス)Level 6という統一された資格を得て、同じ評価を得ることになります。
その点が、日本の大学に進学する際と異なるところだと思います。
日本の大学では、学部や学科もたくさんありますが、同じような分野の学部でも勉強内容はさまざまです。
例えば経営部や商学部でビジネスの勉強をしたとしても、大学が別であれば、学ぶ内容も異なります。
また、日本では、高校も大学もそれぞれ入学時の学力で難易度のランク付けがされている場合が多いです。
今は変わってきているのかもしれませんが、私が日本で教育を受けた頃は、大学で何を学んだのかよりも、どこの大学を卒業したのか、言い換えれば、どれだけ入学時の学力難易度が高い大学を卒業したのかということが、社会全体で重要視されていたように思います。
ニュージーランドでは、資格が統一されているため、どこの大学やポリテクニックを卒業したのかは、それほど重要視されません。
就職面接の際などには、どの学校を卒業したのかではなく、どの分野でどのレベルの資格をとったのか、加えてその資格を使って仕事をしたどれだけの経験があるのかを問われます。
このように、高校から大学まで、ニュージーランドで所得する資格にはしっかりしたフレームワーク(NZQF)があります。
これらのニュージーランドの資格はすべて、NZQA(New Zealand Qualifications Authority)という国の機関で管理されています。
ニュージーランドのポリテクや大学のもうひとつの利点
ニュージーランドの大学やポリテクで資格をとる場合、良い点がもうひとつあります。
それは、必ずしも、何年間か続けて学校に通わなくてもかまわない、という点です。
例えば、ニュージーランドのポリテクニックの2年間のコースの1年目を修了して、2年目はさまざまな理由で就学できない場合、何年かたって続きのコースに通うことができます。2年間のコースの1年だけでも、一部の資格は取得できることもあります。例えば、Level 5の2年間のコースの1年を修了すれば、Level 4のCertificateがとれる、というようにコースによって取得できる資格はいろいろです。
ニュージーランドの大学やポリテクニックで取得する資格はすべて国家資格で、NZQAという国の機関によって管理されますので、一度取得した資格は一生なくなることはありません。これは、留学生でも同じです。
2年のコースの1年を修了し、一旦日本に帰ってお金を貯めてからなど、いつでも好きなときに、2年目を受講することが可能です。
(海外からの留学生は、就労している期間は就労可能なビザ、就学している期間は学生ビザを取得してニュージーランドに滞在する必要があります。)
ニュージーランドでは、高校を修了してすぐの若者だけでなく、いろいろな年齢のさまざまなバックグラウンドの人が、ポリテクなどの学校に通っています。働きながら夜間のクラスに通って資格を取る人も多いです。
子どもができて忙しくて勉強が続けられなくなった女性が、子どもに手がかからなくなってから続きの資格を取るためにポリテクニックに通っていたり、リタイアしてやっと自分の好きな勉強ができるとポリテクニックのビジネスのコースを受講する60代の男性もいました。子どもを預けて週に何日間かオークランドに行って、心理学のマスターコースを受講している女性もいます。
何年も前に取得した資格でも、NZQAに記録が残っていますので、自分がすでに資格を持っている分野のさらに上のレベルの資格をとることもできます。
学校で取得する資格のレベルが全国統一されたフレームワークで決められているというこのシステムは、わかりやすく、多くの人にとってフェアであるような気がします。
参考URL:
- NZQA
- www.nzqa.govt.nz
- 上野清子(Seiko Ueno)
- 新婚旅行でNZに魅せられ、1997年に夫婦でロトルアに移住。
- ジュニアからオールブラックスまで、NZラグビーが大好き。
- 娘一人。
- 留学エージェント「キックオフNZ」マネージャー
- モンテッソーリ小学校Trust Chairperson、通訳/翻訳。