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第12回 ニュージーランド大工業界のキャリアパス・日本人大工が海外で働きたいなら知っておきたいこと

『【海外で大工】高卒でニュージーランド移住したタケが語る現地事情』の記事一覧へ

ュージーランドで大工になった後はどのようなキャリアアップの道筋があるのでしょうか?また、日本人大工が海外で働きたいなら知っておきたいこととは?日本とはまったく異なるスタイルで働いた経験から気づいたことを紹介します。

 

ニュージーランド大工業界のキャリアパス

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見習いからスタートし、一人前の大工になった後は、現場を取り仕切るフォアマン(Foreman)になったり、プロジェクトマネジメントに移ったりと、その後のキャリアパスはさまざまです。

雇われ大工として技術をさらに磨く人もいれば、独立して会社を立ち上げる人も多いです。大工として独立した場合、雇われるよりも入ってくる金額は大きくなりますが、大工道具など追加で購入が必要になったり、有給や病欠休暇もなかったりと、自分で管理しなくてはならないことや、当然責任も増大します。その点、雇われ大工は作業だけに集中できるので気楽です。

いったん独立した後に雇われに戻る人もいますし、それぞれメリット・デメリットがあるので自分の性格やライフスタイルに合っている働き方をみんな模索しています。

または、大工仕事に限らず水回りなど家の修繕をなんでも行うハンディマンになったり、技術者から離れてデベロッパーになる人も。

英語の壁がないので、イギリス、カナダ、オーストラリアなど別の英語圏へ働きに行く人も多いですよ。南極の建設プロジェクトのために、ニュージーランドから人材を募集している求人もよく見かけ、実際に独身の同僚が南極に半年間ほど働きに行っていてとても楽しそうでした。

日本人大工が海外で働きたいなら知っておきたいこと

海外での大工経験について発信しているうちに、「日本で大工をしていて、海外移住してみたい」「日本でしっかり大工経験を積んでから海外に挑戦してみたい」というメッセージが何人もの方から届くようになりました。

実際に現地で働いた経験を通して、日本で経験を積んだ大工さんが海外で働きたいなら知っておきたいことをまとめました。

英語圏のやり方に慣れることができるか?

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以前のコラム でも紹介しましたが、欧米と日本の働き方はとにかく違います。上下関係のある日本とは違い、人間関係はフラット。どんなに経験を積んだ大工さんでも、見習いの新人から呼び捨てにされます。

また、仕事で求められる精密さも、コンマ何ミリで揃える完璧主義の日本に比べるとかなり大雑把。一流の大工ではない俺でさえも戸惑ったポイントだったので、日本でしっかり経験を積んだ大工さんであればなおさら、精密さの違いは慣れるまでつまづくところかもしれません。

「日本で大工の経験を積んでから海外に挑戦したい」

これはもちろん正解ですし、もしそれが「海外で日本の技術を教える」「海外の日本企業で、日本の技術を使って働く」といった状況なら、もちろん日本の技術レベルは重宝されると思います。

ですが、もし目的が「海外に移住すること」で、移住の手段として現地企業に雇われて働くのであれば、実は日本の技術レベルはそこまで求められないのです。

日本とは気候やスタイルが異なり、家の建て方も同じではないので、現地で求められる技術は日本とはまったく別ものだと思っておくほうがいいです。

日本とは文化が違う国で働くということなので、「日本の方が技術が高いのに」とか「日本とはアレコレ違ってやりづらい」などと思うのではなく、その国のやり方や文化をリスペクトしながら働くのがとても大事なポイントです。

日本の技術が高いのは間違いありません。でも世界のレベルが必ずしも低い訳ではないのです。そのやり方で現地ではうまく回っていますし、英語圏にもいい仕事をする会社はいっぱいあります。

大工の資格や経験よりも大事なのは英語力

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「海外で大工がしたいなら、どんな資格や経験があるといいですか?」という質問もよくいただくのですが、俺としては資格や経験よりも、いちばん大事なのは英語(現地の言葉)です。

英語に関しては俺もかなり苦労したポイントなので、これから海外で建築をやってみたいという方がいるなら声を大にして伝えたいです。

英語圏の建築現場では、コミュニケーションを取りながらチームで働くことが大事にされているので、英語でコミュニケーションが取れるようにしっかりと勉強をしておきましょう。

英語さえできるようになっておけば、たとえ経験がなくても仕事のしかたを教えてもらい学ぶことができますからね。

(ちなみに、こちらには在来工法はなくツーバイフォーフォーが主流なので、もし海外移住のためにこれから建築の技術を身につけたいのであれば、ツーバイフォーをやっておくことをおすすめします。)

おわりに

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「日本人の大工として海外で働いてみたい」と考えた時に、自分の最終目的が何なのかをハッキリさせておく方がいいと思います。

「日本の大工技術を海外で使いたいのか?」

「海外のライフスタイル・働き方を手に入れたいのか?」

この2つは全く違うものです。それぞれの目的によって、準備することやアプローチは変わってくるので、いちど自分に問いかけてみてくださいね。

全12回の連載コラムはこれが最終回です。

学歴もなく、英語もあまりできない状態から始まった海外生活、そして大工としてニュージーランド永住権取得に挑戦した長い道のり。

自分の経験が誰かの参考にでもなればと思いこれまで発信してきたところ、「建築で海外移住に挑戦することに決めました」とメッセージをもらうようにもなり、誰かの背中を押すことができているのならとても嬉しいです。

俺自身は、ニュージーランド永住権も無事に取得でき、またコラム連載中にクイーンズタウンからオークランドへ引っ越したことを機に独立して会社を立ち上げたりと、また新たな挑戦に奮闘中です。毎日試練があり全てにおいて試行錯誤していますがとても楽しく充実しています。

ここまで読んでくださったみなさん、本当にありがとうございました!

(インタビュー/記事執筆:妻)

コラムに掲載している内容は、すべて私、個人の経験にもとづく情報提供のみです。移民法も私が経験した当時とコラム執筆時点では大きく変わっています。私は移住をアドバイスする資格をもっていないので相談にも応じませんのでご了承ください。あくまで私の経験談です。

 

高卒から大工としてニュージーランド永住権を取得した関西人。オーストラリアでも建築現場を経験。ニュージーランドでは見習いから始め、大工の国家資格を取得。高級注文住宅を建てている。SNSやYouTubeで発信中
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