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第214回  移住者ならではの医療問題 

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【移住者ならではの医療問題】
 週末の新聞で、「これはキーウィにはない、移住者ならではの問題だ」と考えさせられる記事が2つ続いたので、取り上げてみます。永住権があるか、ワークビザの期間が2年以上あれば、キーウィでも移住者でも受けられる公共医療サービスは同じですが、移住者には「死角」がありそうです。
 
【例1:移住者を訪ねてきた家族は公共医療の対象外】
NZ訪問中の親が心臓発作
 NZに移住している娘を訪ねてフィジーからやってきた58歳の母親が、オークランド到着後数時間で、心臓発作で倒れてしまいました。娘夫婦はここで国籍も取得していますが、観光ビザで入国する家族は公共医療の対象になりません。これは移住者ならではの「死角」ではないでしょうか。親子ともキーウィなら問題になりません。
 
入院費は1日6,300ドル
 母親はICU(集中治療室)に入っており、1日の入院費は6,300ドル。すでに最初の1週間だけで病院からの請求が8万6,000ドルにのぼっているそうです。とてもではないですが、おいそれと出せる金額ではありません。さらに、ここからいくらかかるのかわからず、10万ドル以上にのぼるとみられています。
 
対象にならない場合の医療費は莫大
 娘夫婦は「どうやって支払ったらいいのかわからないけれど、絶対にあきらめない」と語り、意識が戻りつつある母親の回復に全力を上げています。公共医療の対象にならない場合の医療費は莫大です(これは日本でもどの国でも同じですが)。母親は海外旅行保険に入っていなかったため、医療費を保険に請求することもできません。親族のNZ訪問には必ず海外旅行保険に入るようにしましょう。
 
【例2:病気で永住権申請が却下】
脳腫瘍を理由に申請却下
 49歳の英国人の男性と家族は2006年にワークビザで移住し、2009年にロングターム・ビジネスビザに切り替えビジネスを始めました。永住権の申請を行おうとしていた矢先、男性の脳にゴルフボール大の腫瘍が見つかりました。手術を受けたものの後遺症が残り、働けなくなってしまいました。一家は公共医療の対象にはなっても、永住権がないのでワーク・アンド・インカムからの生活保障が受けられず、生活が立ち行かなくなってしまいました。
 
 一家は周囲の協力でなんとか永住権の申請を行ったものの、移民局はこれを却下したため国外退去に直面しています。移民局は申請却下の理由を、「申請人はすでに事業に積極的に関与しておらず、医療サービスに対して多額の費用と負担を強いる可能性がある」と説明しています。
 
 このように健康状態の理由で永住が叶わなくなってしまう例は、たくさん報じられています。申請者の多くが30代後半~40代と働き盛りでいながら、統計的には病気にかかる確率が高くなる年齢であることと無関係ではないでしょう。病気の発覚だけでも大変なことなのに、それを理由で永住の夢が絶たれることは、移住者の「死角」ではないでしょうか。永住権を目指す皆さん、健康管理にはぜひお気をつけください。

 

高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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