ちょっと前までは簡単に口にするのがはばかられるような言葉だった、「乳房切除」。一昨年ハリウッドスターのアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳ガンを発症していないにもかかわらず、将来の予防のために乳房切除に踏み切り大きな話題になりました。
予防のための切除には賛否両論がありますが、あの一件で乳房切除(mastectomy)という言葉がより頻繁に語られるようになった気がしませんか。少なくともBRCAという通常はガンと闘うはずの遺伝子が変形した、いわば乳ガンになりやすい遺伝子を持った家系があることが、より知られるようになりました。
移住してくる前の経験ですが、知り合いの女性が海外に住む妹から、「乳ガンと診断された。お願いだからおねえさんも検査に行って」という連絡をもらい、「まさか!」と思いながらも検査を受けたら、自分にも乳ガンが見つかったということがありました。
幸い早期発見で大事には至りませんでしたが、発症がわかったときは2人とも40代後半でした。自分だけでなく、母親など身近な人が50歳までに乳ガンを発症していた場合は変形遺伝子を持っている場合が多いそうです。50代で乳ガンになったキーウィの娘さんも30代で変形遺伝子の検査をし、持っていることが確認されました。
それ自体はショッキングなことですが、遺伝子があるからといって必ず発症する訳ではありません。娘さんは母親の闘病を支えながら、若くして検査と予防の重要さに気づくことができたことでしょう。万が一発症しても、発見が早ければ早いほど対応の選択肢が広がります。
切除した後は多くの人が再建を望みます。日本では切除と再建を同時に行う傾向が強まっていますが、ニュージーランドの公立病院は切除は命にかかわる治療行為、再建は命にはかかわらない美容整形という位置づけで、切除後は多くの場合で順番待ちのリストに入れら再建手術を待ちます。
最近報じられたダニーデンの女性は2012年12月に片方の乳房を切除後、2年以上再建を待っているそうです。昨年1月には「半年から1年待ち」と言われていたのに、年の後半になって「少なくともあと2年待ち」と告げられ、いつ手術ができるのかまったくわからないようです。
リストにはこの女性の前に19人が待っており、女性の後には「もっと大勢が待っている」とも告げられ、ダニーデン病院では昨年、予算の関係で乳房再建手術が1回も行われなかったことも知らされました。
「ニュージーランドは医療が無料。ガン治療も無料」と言えば確かに聞こえがいいですが、無料の代わりに患者には選択肢がないのも事実です。この女性は胸にしこりを見つけたとき、「医療保険に入っていればよかった」と思ったそうで、「(入っていれば)再建手術はもう終わっていたでしょう」と語っています。
原文はリンクご参照
http://www.nzherald.co.nz/nz/news/article.cfm?c_id=1&objectid=11393457
さて、医療保険に入っていれば、本当に再建手術はカバーされるのでしょうか?
つづきは次回にお話します。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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