前回、飲食店経営者の皆さまを対象にコラムを書いてみたところ、関係者からのお問い合わせはゼロだったのですが、全く別の業界の経営者の方々からご連絡をいただきました。ありがとうございます。改めていろいろなビジネスがあるのを実感しました。
さて、利益補償保険(ビジネス・インタラプション保険)について、もう少し詳しくお話してみます。この保険は、飲食店に限らず、あらゆる業種が自然災害や火災などの不可抗力で一定期間以上の営業ができなくなった場合に、休業期間中の営業利益を補償するものです。
休業期間が長期に及んでも、前年度の年間粗利益(売上高から売上原価を差し引いた額)相当の保険金が最長24ヶ月間支払われます。例えば年間粗利益が15万ドルの店が半年間営業できなくなった場合、諸条件を満たしていれば7万5,000ドルが保険で補償されます。
(諸条件とは、「停電の場合は最初の24時間は保険の対象にしない」など各保険会社が設定しているので要確認)
営業ができなくなる代表的な例としては、以下のようなものがあります。
・自店や集合店舗での火災
・落雷や事故による長期の停電や断水
・床上浸水や地震
・自動車事故など事故による店舗への被害
火災の場合は自分の店からの出火と近隣店舗の類焼が考えられますが、いずれも保険の対象になります。火災の場合、小火で終わったり類焼を免れても、消火活動で店舗や在庫、電気製品が水浸しになり、しばらく営業ができなくなるケースがあります。停電の例では90年代終わりのオークランドで、1ヶ月以上の歴史的な大停電がありました。
水害もよく起きる自然災害です。暴風雨の後に低地や路面店、地下店舗で浸水し、水が引いても復旧までに数日かかり、その間の営業ができなくなることが考えられます。過去に浸水の被害があったエリアで営業している場合は、特に注意が必要です。
地震はクライストチャーチの例を挙げるまでもなく、一定規模以上であれば、自店が無事であっても建物の安全が確認されるまで営業ができなくなる可能性があります。また停電や断水、液状化現象など自店以外の問題で休業に追い込まれることもあり、こうした状況が数日から、最悪数ヶ月に及ぶことも想定されます。
路面店の場合は、事故に巻き込まれることもあります。最もよくあるのが自動車事故です。特に好立地とされる角地はカーブを曲がり切れなかった車が突っ込んで来るなど、あまり考えたくはありませんが、その危険性が高いことは認識しておいた方がいいでしょう。以前にこのコラムでこうした店の話を取り上げたことがあるので(この店も角地)、路面店の場合は参考にしてみて下さい。
第112回 対物事故を起こしてしまったら-自動車保険編
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=112
それ以外でも、店の前が駐車場になっていて、ハンドル操作を誤った車が突っ込んできて店のショーウィンドウを割ってしまったり、入り口が破損して出入りができなくなったという例もあります。NZは一定量であれば飲酒の運転が認められているので、酒を飲んでハンドル操作を誤るということは意外に多いようです。(上のリンク先の店も3年間で2回被害に遭ったそうです)
利益補償保険の場合、設定額を経営者が決められるのも魅力です。年間粗利益が15万ドルでも、従業員がいなかったり自社店舗だったりで、「コストのプレッシャーがない」という場合、設定額を10万ドルにして保険料を抑えることもできます。いずれにしてもビジネス保険は複雑なので、さらに詳しいことは直接お問い合わせ下さい。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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