このコラムでも何回か取り上げているカンタベリー地方を襲った大地震ですが、今回は地震による今後の住宅保険に与える影響についてお話してみます。
ある保険会社の資料は英語を直訳すると、「地震による最大の衝撃はこれからかもしれない。それは再保険市場というあさっての方角からやってくる」と述べています。資料によれば、カンタベリー地震の結果、NZの保険会社は3つの打撃に直面しています。
(1)再保険料の値上がり
(2)再保険に出せない部分の拡大により保険会社が自社で追うリスクの上昇
(3)地震補償の制限
いずれも保険加入者にとっても重要な問題です。平たく言ってしまえば、今回の地震で保険会社の保険を引き受けている、言ってみれば「保険会社の保険会社」である海外の再保険会社がNZにおける地震への認識を改め、引き受けに対して非常に慎重になっているというのです。
慎重になるということは、「再保険料の値上げ」と「引き受け部分の縮小」という形で跳ね返ってきます。再保険に出せない部分が増えれば増えるほど保険会社のリスクが上昇するので、保険料の値上げを引き起こす可能性が高まります。
資料によれば、NZでは年間1万5,000回以上の地震(無感地震含め)が起きているそうで、これほどの地震国でありながら、これまで住宅保険が超低コストで地震を全額補償してこれたのは「世界でも稀」ということです。
近年大地震が起きた他国の例で見ると、チリでは保険料が30~50%値上がりし、カリフォルニアや神戸では地震への補償が制限され、補償設定額の25%を上限とするなどの新たな規制が導入されたそうです。そのためNZの保険業界も今後何らかの対応を迫られる模様です。
ただし、NZの場合、地震に限らず住宅に対する自然災害による被害はまず政府機関のEQC(地震委員会)が窓口になるので、今後の対応に関しても国と保険会社双方が話し合った上で決定されることになるでしょう。
いずれにしても住宅保険に加入していない場合は、EQCを通じた国からの支援も受けられないので、住宅を所有する場合はやはり住宅保険に入っておく必要があるでしょう。
借家住まいの場合には住宅保険は関係ありませんが、家財保険(コンテンツ保険)に入っていればEQCの対象になります。地震だけでなく自然災害により家の中の家財に被害が出た場合(大雨による雨漏りや床上浸水など)、上限2万ドルまではEQCで、それ以上は保険会社が補償します。
EQCと保険会社の関係はすでに書いているのでリンクをご参照下さい。
第127回 保険と地震
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=127
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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