新聞報道によれば、ニュージーランドでは年間2万2,000台(警察推定)~3万5,000台(保険会社推定)の車が盗難に遭っています。毎日60~100台近い車が盗まれていることになり、犯罪の中でも非常に身近な問題です。そのうち3台に1台か2台に1台は発見されず、解体され部品として売却されるか、塗装し直しナンバープレートを付け替え、別の車として中古車市場に流れてしまうそうです。記事では1台当たりの平均価値を7,000ドルとした場合、盗難車市場は1億ドルに達すると試算しています。
警察は、北島には広範囲に組織化された車両専門の窃盗集団があり、30人のリーダーの下に多数の実動部隊がいるとみています。実動部隊は指定された車種の車を盗んでくるのが仕事で、目星をつけた車のナンバーをもとに郵便局で所有者の住所を有料で手に入れ、盗難発覚まで時間が稼げる真夜中に盗みに入り、ものの1分で盗み出してしまうそうです。一晩で人気のあるスバル車ばかり6台も盗んだ例もあったそうです。
彼らの報酬は現金ではなく、通常「P」と呼ばれている覚せい剤で、1グラム当たり800ドルで盗難車の車両価値に応じて現物支給されるそうです。盗難車は地下工場に運び込まれ2時間ほどで解体され、被害者が盗難に気づく頃には足のつきにくい部品に成り代わっており、その後、新聞広告やトレードミーで売りさばかれてしまうそうです。
こうしたプロ集団の手にかかった場合、盗まれた車を発見するのは非常に難しいでしょう。警察も特別捜査班を設け犯罪組織の摘発に出ていますが、個々の車両盗難は以前ここでも取り上げたように、すぐには捜査されない可能性の高い「優先捜査」(順番待ち扱い)に指定されています。(詳しくはリンクをご参照)
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=25
これは捜査するかどうかわからない「任意捜査」に次いで下から二番目の扱いです。
実際に盗難に遭った場合、警察に通報すると「見つかったら連絡する」と言われることが多いようです。見つかる確率と見つからない確率はほぼ半々ですから連絡があれば運がいい方でしょう。見つかる場合の多くは、ガソリンがなくなるまで乗り回し、なくなったところで乗り捨ててあるケースです。ガソリンスタンドには防犯カメラが設置されているため犯人はまず近づきません。見つかっても車体が傷ついていることがほとんどで、最悪の場合、証拠隠滅に火を放ってあることさえあり被害は深刻です。
これだけ車両盗難が多発しているとなると防止手段は限られていますが、それでも車上荒らし防止も含め、車を離れる時には車内に何も残さない、ロックはもちろん窓も完全に閉めることは最低限守りたいものです。できる限り鍵のかかるガレージを利用し、屋根だけあるカーポート、ドライブウェイ(敷地内の私道)に停めざるを得ない場合はアラームやハンドルロックを利用し、隙を見せないよう警戒した方がいいでしょう。
意外かもしれませんが、数が少なく足がつきやすい高級車よりも、部品の需要が高く流通量も多い普通の車の方が狙われる可能性が高いこともお忘れなく。犯罪組織にすれば解体して部品として売った方が、身元が割れやすい中古車として売るよりも儲けが大きくリスクが少ないのです。
■お知らせ■
このコラムでは、みなさまからの保険に関するご質問を受け付けております。関心の高い内容に随時お答えしていきますので、お気軽にこちら⇒ hoken@xtra.co.nz までご質問をお送りください。(お送りいただく場合は、タイトルを「NZ大好き:質問コーナー」として下さい)
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
- Accelerate Consulting
- PO Box 87411, Meadowbank, Auckland 1742, New Zealand
- Tel : 09 578 0792
- Mobile : 021 968 968
- E-mail : takahashi@accelerateme.co.nz
- Website(日本語): www.hokennz.com
- Website(英語): www.accelerateme.co.nz
- A disclosure statement is available on request and free of charge.