前回、持続可能な発展が一番期待できる「牛の目」モデルに触れましたが、今回は、その「私達の日々の営みは、健全な地球環境あってこそ」の考え方が含まれている活動例についてお話をさせて頂きたいと思います。
環境教育の大切さ
環境問題に取り組む際、今までの意識や考え方、行動を変えていくのに一番必要なのは「教育」だと言われています。実際、「United Nations Conference on Environment and Development (国連環境開発会議)」、別名「地球サミット」 でも、世界中の学校で教育の一環として「環境教育」を取り入れていく大切さが議論されていました。
Enviroschoolとは?
NZ国内では2001年から、マオリ族の「人は自然環境の一部の存在」の考え方を取り入れた 「Enviroschool」という体験型の環境教育プログラムを、幼稚園から高校まで、任意ですがカリキュラムとして導入できることになりました。必修ではありませんが、今ではNZ国内の3分の一(1000以上)の幼稚園と学校が、「Enviroschool」をカリキュラムの一環として取り入れています。「Enviroschool」としての活動内容は各学校の判断によりますが、主に、人は自然あってこその存在であること、人が自然から受けられる恩恵や、色々な環境問題が引き起こされる原因を話し合ったり、自分達がその環境問題の悪影響をどう最小限度に抑えていけるか実際に行動に移していく活動をしています。 生徒達が帰宅した際、それらの活動で学んだことを保護者に伝えることで、保護者にも間接的に環境教育を促進していく狙いもあります。
Enviroschoolの活動例
例えば、「Enviroschool」のほぼ全ての幼稚園・学校ではゴミを極力出さないzero wasteの活動をしています。その一環として、生徒たちがランチを食べた後に出る生ゴミを「ゴミ」として捨てるのではなく、学校のコンポストの箱に入れて有機物の肥料に変えて、学校菜園に役立てていたりします。こういう活動では、微生物やミミズが生ごみを分解する働きや、そのおかげで人が受けられる恩恵を学んだりします。他にも水や電気の資源の大切さを学んだり、その資源の節約や河川の保全活動の一環として植樹活動をしたりしています。「Enviroschool」のプログラムでは、参加校がどれだけ多岐に渡って地域社会とも連帯して環境教育に積極的に関わっているかによって、Bronze (銅賞)、Silver (銀賞)、Green Gold (自然金賞?緑金賞?) を得られるシステムになっています。
Enviroschoolの課題
今では1000以上の幼稚園と学校が参加している「Enviroschool」ですが、必修科目ではないのもあって、参加校は国内全体の半分にも達していません。特に 「Enviroschool」として活動している高校は、とても少ないのが現状です。おそらく高校にもなると、生徒達はNCEA (National Certificate for Educational Achievement)などの国家試験に取り組まなくてはいけないので時間割が一杯で、高校が必修ではない活動を新しく導入するのはなかなか難しいのではないかと思います。しかし、「教育」は時代の変化やニーズに対応していく傾向にあると思うので、近い将来「環境教育」が必修科目になる日がやって来るのかもしれません。
- 水谷公美 (みずたに さとみ)
- オークランド在住。
- 兵庫県淡路島出身。
- 1995年阪神・淡路大震災に被災後、NZ移住。
- 動物・植物など自然が大好き。
- 日本語を教える仕事の傍ら、趣味が高じて理学準修士号(環境マネージメント)を取得。