オークランドの小学校・中学校・高校で、ボランティア教師として活動していた時、NZの自然環境だけでなく、NZの教育にも魅了されました。NZで日本語を教える仕事をしたいと一念発起して、ボランティア活動を終えた後、Auckland College of Education (現在のオークランド大学教育学部) で、教職免許を取るための勉強をすることにしました。
「Outdoor Education」を教えるための勉強
教える科目を2つ選ばないといけないということで、私は「日本語」と環境関連の勉強もできる「Outdoor Education」を選択しました。今回は「Outdoor Education」の訓練で経験したことを書いてみたいと思います。
訓練では、とにかく実習と精神面での成長(自信や相互信頼の向上など)、が重視されていました。野外活動中に困難に直面した時にどう対処するかを体で覚えたり、不安や恐怖との向き合い方、チームで協力して乗り越えたりする方法など、生徒にそういった事を教えるスキルを身に付けることを学びました。
「わざと」転覆?!
例えば、カヤックで転覆した際、水中で体が逆さまになってしまったら、どう脱出するか皆さんはご存知ですか? 私が学んだ対処法は、使用していたパドルを水底に思い切り突き立て、その勢いで転覆しているカヤックと自分の体を水中から脱出させる方法です。これが結構難しい。訓練はプールで行われたので、プールの底にパドルを突きつけるように言われましたが、滑ってなかなか思い通りにいきませんでした。失敗が続き、息も続かなくなり、大量の水を飲み溺れかけたこともありました。クラスメートが助けてくれたので、何とか事なきを得ましたが、水を吐き出すのが苦しくて、水難事故の恐ろしさを実感しました。しかし、先生(の卵)が怖がっていては生徒に教えることができません。これらの訓練では、不安とどう向き合い、克服するのかを肌で学ぶことができたと思います。
「わざと」遭難?!
一番印象が強かった実習は、「bush walkの途中NZの森で道に迷った想定で、2日間生き抜く」訓練です。そう、また「わざと」遭難するのです。私は驚いて自分の耳を疑いましたが、この訓練は、遭難した際どのようにして生き延びるかを生徒に教えることができるようになるための擬似遭難だということでした。と言っても1人で迷うのではなく、5〜6人の班に分かれて一緒に遭難するのですが、各自「コンパス」や「地図」など、ある程度の装備をして迷う?!ことになりました。
その装備リストの中に「tarpaulin」というのがありました。私はそれが何なのか分からず、なぜか「あってもなくてもいい物」ではないかと思ってしまい、意味を調べることもせず、脳内で自分の装備リストから外してしまいました。後に、自分のこの判断ミスで大変な思いをすることになるとは、その時は思ってもみませんでした。
- 水谷公美 (みずたに さとみ)
- オークランド在住。
- 兵庫県淡路島出身。
- 1995年阪神・淡路大震災に被災後、NZ移住。
- 動物・植物など自然が大好き。
- 日本語を教える仕事の傍ら、趣味が高じて理学準修士号(環境マネージメント)を取得。