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第8回 Traditional Ecological Knowledge (伝統的な生態学的知識) と 経済の関係

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突然ですが、皆さんにクイズです。下の写真に写っている4つの植物は、オークランドの道端では結構一般的に見られる植物です。 以下のAからDの植物の名前は何でしょうか (「C」は丸い根っこに注目)。答えはこの記事の一番下にありますが、まずは、答えを見ずにそれぞれの名前を言ってみて下さい (日本語でも英語でも、どちらでも結構です) 。

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TEKと経済の関係

TEKと経済の密接な関係を発表した興味深い研究結果があります。

  1. 個人の文化背景に関わらず、TEKのレベルが高い (例:周辺で見かける多数の植物の名前と特徴が言える) 人は収入が低く、TEKのレベルが低い人は、収入が高い傾向にある。
  2. TEKのレベルが高い人はあまり工業化・都市化が進んでいない地域で地元の環境資源に頼る生活を送っている傾向にあり、TEKのレベルが低い人は、その反対の傾向にある。
  3. 工業化・都市化が進んでいる地域では、収入が高くなるにつれて、ごく少数の限られた人達にTEKが集中して見受けられる (つまり、TEKをよく知っている人達とそうでない人達のギャップが激しく、TEKをよく知っている人達は少数派) 。一方、あまり工業化・都市化が進んでいない地域では、地域全体でTEKが共有されている (つまり、ほとんどの人達がTEKをよく知っている) 。

この研究結果は、50種類以上の植物の名前や特徴が言えるかどうかを調べたものです。なので、私が上記に出したクイズは植物の数が少なすぎて、回答から得られる結果はあまり当てにはなりませんが、お試し程度と思って頂けたらと思います。皆さんの正解率はいかがでしたか。ちなみに、私は全ての植物の名前が言えてしまうので、収入面の推測に関して「お見事」という感じです (苦笑) 。

見直され始めたTEK

最近、環境資源管理の分野において、 TEKのこれからの役割が注目され始めています。上記のように、TEKは経済とも深い関わりがあります。先人は、技術が発達していなかった時代に生きながらも、経験から培い受け継がれて来たTEKを活用して、 効果的に次世代に託すための環境資源管理をしてきたケースが多々あると認識され始めたのです。持続可能社会が危ぶまれる現在、科学的根拠だけにこだわるのではなく、先人の知恵や知見にも注目すべきという意見が広まってきているのです。

NZの課題

NZでは最近、自然環境を守っていくために、マオリ族が今まで培って来たTEKを記録に残すことが重要視されるようになってきています。1820年頃まで文字を持たなかったマオリ族は、部族の歴史や家系図や文学はもちろん、TEKも歌や踊り、伝統彫刻を通して語り継ぎ継承して来たと言われています。その情報を文字化してNZの環境資源管理に役立てるために、これからはマオリ族と研究者が互いに協力していくことが不可欠だと言われています。

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クイズの答え
  1. Buttercup (キンポウゲ)
  2. Moth plant / Bladder flower (和名不明)
  3. Ladder fern (はしごシダ。シダ類で唯一塊根があるシダ)
  4. Daisy (ヒナギク)
 
水谷公美 (みずたに さとみ)
 
オークランド在住。
兵庫県淡路島出身。
1995年阪神・淡路大震災に被災後、NZ移住。
動物・植物など自然が大好き。
日本語を教える仕事の傍ら、趣味が高じて理学準修士号(環境マネージメント)を取得。