【人口増、高齢化、死因の変化で医療費が急増】
前回は80年近く続くNZの無料公共医療の成り立ちについて話しました。90年代には一部自己負担制度も導入されたものの、踏み倒す人が続出し(笑)、制度として定着しませんでした。以来、公共医療は全額無料の状態に戻ったわけですが、人口の増加と高齢化に加え、これも前回お話したように、戦後は死因のトップが伝染病からガン・心筋梗塞・脳卒中などいわゆる三大疾病へと変わったことで、医療費が急増しています。
【医療費の高額化】
死因の変化がどう医療費に影響するのでしょう?三大疾病のような現代病はどれも治療費が高額です。心臓でも脳でも手術となったら大手術です。高い技術をもった専門手術医が必要なだけでなく、大勢の医療関係者が何時間も関わります。必要となる医療機器や機材もどんどん改良されていき、その分の設備投資が続きます。心臓や脳で「倒れた!」となったら、一刻を争う事態ですから最新技術の導入は欠かせません。こうしてNZに限らず、世界中で医療費というものがどんどん高額化しているのです。
【税金負担の医療費】
NZではどんどん高額化する公共医療を無料で提供しています。そのお金がどこから出ているのか、皆さんご存知ですか?それはズバリ、税金です。NZには医療費のために積み立てている特別な財源がありません。ご存知のように、ケガのためのACCにはACCレビーがあり、特別な財源が確保されていますが、医療にはこれに相当するものがないのです。いわゆる一般会計から負担しています。
【税収は景気次第、医療費は一貫して増加】
納税額が人口の増加や高齢化、医療費の高額化と同じ勢いで増えていけばいいのですが、景気には浮き沈みがあります。景気が良ければ会社が儲かり(法人税)、賃金が上がり(所得税)、消費も進んで(GST)、税収が増えますが、景気が悪くなればその逆のことが一斉に起き、国がコントロールできません。しかし、高齢化も病人の数も医療費の値上がりも景気とは関係なく増え続けます。では、どうやって帳尻を合わせるのでしょう?
【70年代からある公立病院での待ち時間問題】
かみ合っていない医療の需要と供給の帳尻を合わせているのが、公立病院で問題になっている「待ち時間」です。限られた供給を最大限に活かすために、公立病院では救急車で運び込まれてくるような急患や進行したガン患者にはただちに対応しますが、ガンが疑われても、ガンかどうか確定するまでには、専門医との予約→受診→検査→再度専門医との予約→病名確定と、治療が始まるまで毎回毎回予約を入れ、長い待ち時間が生じます。数週間ならまだしも、病気や症状によっては数ヶ月、数年越しの待ち時間になることはざらです。この問題は今に始まったわけではなく、70年代から続いているのです。
【130万人が医療保険に加入】
需要に供給が追いつかない以上、患者は待つしかありません。元が無料なので、「少しはお金を払うから早く診てほしい」というわけにもいきません。逆に全額を払うなら、私立病院で診てもらうこともできますがこの場合は非常に高額になり、手術・入院となれば万単位の出費を覚悟しなければならなくなります。その間を埋めるのが医療保険なのです。月々の小さな出費で、いざというときに大きな保障を確保できます。
だからこそ人口450万人の国で130万人もの人が医療保険に入っているのです。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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