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第269回  医療費が無料のNZでどうして医療保険がいるのか?

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【NZは医療費が無料なのに】
 この仕事をしている限り永遠に聞かれるこの質問。
「医療費が無料のNZでどうして医療保険がいるんですか?」
今まで何人の方から同じ質問をされてきたことか。確かに普通で考えると不思議なことです。無料のものを自腹で保険に入ってカバーするとはどういうことか?
「その辺がどうしてもよくわからない。」
というたくさんの声を受けて、NZでの医療制度そのものについて取り上げてみます。
 
【80年の歴史があるNZの無料公共医療】
 NZの無料医療は1938年の社会保障法を起点とし、約80年の歴史があります。この法律により、国は医療費の負担に高い優先順位を与え、費用の拡大に対応してきました。公立病院の完全無料化は戦後の1958年に始まり、治療・薬の処方・検査・手術・入院といった全ての医療が無償で提供されるようになりました。医療制度はその後も数々の変更を経ましたが、現在も公立病院など公共医療は無料です。ここでNZの医療制度を二つの面からみてみましょう。
 
【医療面での変化:戦前の伝染病】
 まず、医療面での変化です。今の私たちにはピンと来ませんが、戦前は先進国でも死因の多くが伝染病でした。先日の映画祭のジブリ映画「風立ちぬ」でも主人公の妻となる大金持ちのお嬢さんは結核で命を落としていました。当時の結核はどんなにお金があっても救えるとは限らない、恐ろしい病気だったわけです。世界中で4、5千万人が死亡したといわれるスペイン風邪の正体もインフルエンザでした。NZでも過去にはインフルエンザの流行で、村ごと過疎化してしまうような事態が起きていました。
 
【医療面での変化:戦後の三大疾病】
 戦後になると、生活が豊かになり先進国では医療、衛生、栄養が改善し、人々は長生きするようになり、死因のトップも伝染病からガン・心筋梗塞・脳卒中からなる、いわゆる三大疾病へと変わりました。こうした変化で医療に求められるものも伝染病への予防医療から、高度な治療技術を必要とする入院医療に変りました。医療の中心も町医者から大病院へと移っていきました。NZでも70年代以降、公立病院の建設や拡張、人員の増員や最新設備の導入が進みました。
 
【財政面での変化:財政危機】
 その頃のNZはイギリスへの農作物輸出での最恵国待遇を失い、2度のオイルショックからも大打撃を受け、財政や経済が急激に悪化している時期でもありました。90年にかけて時々の政権は経済介入に出たり、行政改革や財政改革を断行したりしましたが、国にお金がない状態が続き、医療にも多大な影響が出ました。
 
【90年代には一部自己負担も】
 90年代に入ってからは、公共医療に対して一部自己負担制度が導入された時期もありました。しかし、国民はあまりにも長い間無料の医療に慣れてしまっていたため、支払いをしない人が続出し、費用回収のための費用もばかにならず、最終的に自己負担制度は廃止され、再び全額無料の状態に戻りました。
 
 次回は医療制度と保険の関係についてお話します。

 

高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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