【ローンを組む時に銀行から保険を勧められたら】
住宅購入の頭金が最低20%に引き上げられても、日本人の皆さんの住宅購入は旺盛ですね。「家を買いました」とか「購入を検討中ですが保険はどうしたらいいですか」といったお問い合わせを良く受けます。その中で、「住宅ローンを組む時に銀行から保険を勧められた」という話が非常に多くなっています。どこの銀行も窓口販売に力を入れているので、「ローンだけでなく保険も」というわけです。
【銀行が真っ先に勧める住宅保険】
ローンを組む時に銀行が保険を勧めることは以前からよくありました。その場合、一番多いのが住宅保険です。家を購入してもローンの返済が終わるまでは銀行に担保として差し出しているわけですから、火事や地震で壊れたりしたら大変なのは購入者も銀行も同じことなので、これはわかります。
【次に勧める生命保険】
次に多いのが生命保険です。銀行にしてみれば、どんな事情にせよローンの返済が止まってしまうのが一番の問題です。ですから一家の稼ぎ手、ローンの実質的な返済者が生命保険に入るよう強く勧めてきます。これも理解できます。しかし、よくあるのは生命保険の受取り額とローン残高が同じ金額の設定です。これでは一家の稼ぎ手になにかあった場合、ローンは完済できても残されたご家族に一銭も残りません。
【最近よくある問題のケース】
最近よくあり、私も実際に何度も質問や相談を受けているケースに、医療保険の加入があります。これは最近の傾向です。中にはすでに別のところで入っている医療保険や生命保険を解約させて、銀行で入り直させるケースです。人によっては「保険に入り直さないとローンが組めない」と勘違いしていたり、さもそうであるかのような説明を受け、申し込み書にサインをしてしまった、という場合もあります。
【なにが問題なのか?】
これにはいくつもの問題があるので、十分ご注意ください。
(1)既往症がある場合
入り直す前に発症していたり、治療していたりする病気や症状(完治したものも含む)があった場合、新しく銀行で入り直した保険ではこれらはすべて既往症と見なされ、継続治療や再発した場合に保険の対象になりません。
(2)条件の違い
一口に医療保険といっても、保険会社だけでなく、各保険プランによってあらゆる条件が違います。例えばガンになったときに化学療法や放射線治療を保険の対象にしない保険もあれば、治療の種類、保障上限額を年間○万ドルまでと明確にしたものまで、さまざまです。「どちらも医療保険だし」と簡単に乗り換えてしまうと、以前の保険と比べて条件の悪いもの入り直している場合があるのでご注意ください。
(3)担当者に保険の知識がない
保険に入り直すなら、以前の保険と入り直す保険がどう違い、入り直す保険のどこがどれだけいいのかといった説明をきちんと受けるべきですが、ローン担当者にそこまでの知識がなく、「説明らしい説明はなく、ローン書類と一緒に保険の申し込み書もあり、気がつかないうちにサインしていた」という話もあります。「別の保険担当者から電話で説明を受けた」という例もありますが、英語の電話で細かい内容の全てを理解するのはかなり難しいようです。
【保険を勧められても冷静な対応を】
そもそも論で銀行は保険加入をローンの条件にしてはいけないのです。こうした抱き合わせ販売は禁止されています。なのでローンを組む時に保険を勧められても、冷静な対応を。まず、はっきりさせるのは「保険に入らなければ、ローンが組めないのか」という点で、すでに生命保険や医療保険に入っている場合はそれをきちんと伝え、それでも入り直しを進められた場合は、メリットをきちんと説明するように要求すべきです。その上で、「検討する」として、その場で慌ててサインしないことです。
既往症があるのに医療保険を解約してしまった例などありますので、くれぐれも冷静に。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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