【日本だったら専門医でも、NZだったらまずGP】
前回からのつづきです。夏は日焼け、汗、虫刺されなど肌のトラブルが多い季節で、アレルギー症状が起きたり、腫れたり、掻きむしったり、むくんだりとさらに症状が悪化してしまうことも多く、「皮膚科に行きたい」というお問い合わせが増えます。しかし、前回お話したように、NZ独特の医療制度ゆえ、日本だったら専門医に直行するケースでも、NZだったらまずGPなのです。
【なぜGPの権限がこんなに強いのか】
「肌の問題なんだから、最初から皮膚科に行って専門の医者に診てもらいたい」
「GPに行く費用も時間もムダでは?」
「どの医者に会うのか、どうして個人が決められないんですか?」
「なぜGPの紹介状をもらって皮膚科に行かないと保険の対象にならないの?」
という皆さんの疑問もよくわかります。そもそも、
「なぜGPの権限がこんなに強いのか?」
と思いませんか?
【GPを持つことを前提にした医療制度】
前回、「NZでは歯科以外、眼科も含めてすべてGPが医療制度の玄関口になります」と説明しました。玄関から入らないと国民や永住者は医療保険が使えないなどの支障が起きます。NZの医療制度は誰もがGPというかかりつけ医を持つことを前提にしているので、GPを経由しないと国からの薬代補助が受けられないなど、GPにさまざまな権限が認められています。
【最も強い権限が専門医の紹介】
GPが持つ権限の中でも最も強いものが専門医の紹介です。紹介状さえ出れば、専門医以降をカバーする医療保険に入っている限り、民間の専門医にかかっても、診療、検査、手術、入院とそれ以降の治療は既往症でない限りはすべて保険の対象になります。保険がない場合は、公立病院の専門医に回されます。しかし、皆さんご存知のように無料の公立病院はどこも満杯状態で、専門医とのアポを取るのも場合によっては数ヶ月から1年以上待ちです。
【「これ以上できることがない」ことを証明】
国はGPに強い権限を認めている代わりに、パンク寸前の公共医療に入ってくる患者を増やさないために、GPが公立病院を紹介する場合、「これ以上GPでできることがない」ことを証明するよう求めているそうです。そうでないと、紹介状を出しても患者がGPに送り返されてしまうのです。すぐに送り返されるのではなく、何ヶ月も待たされてからの場合もあり、これが一番厄介なケースになります。
前に知人の経験をご紹介したコラム、
第250回 片耳が聞こえなくなっても公立病院なら順番待ちの実例
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=250
で、耳が聞こえなくなった友人のことを取り上げましたが、これなどその一例です。
【GPは玄関口でもあり防波堤でもある】
よくGPで「医療保険に入っているか?」と聞かれるのは、このためです。保険さえあれば、GPはすぐにでも紹介状を書くことができ、患者は順番待ちをすることなく民間の専門医にかかることができます。このようにGPは医療制度の玄関口である一方、無料医療に入ってくる患者の数を制限するための防波堤の役目も負っているのです。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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