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第246回  医療に関する日本人社会の都市伝説:病気はACCの対象になりません 

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前回からの続きです。『病気で倒れてしばらく働けなくなったら、どうしますか?』
という質問にかなり多くの日本人が『ACCがあるから大丈夫!』と答えるという話でした。以下、都市伝説化している内容を挙げてみます。
 
質問:『病気になると、ACCがなにをしてくれるんですか?』
都市伝説:『医療費を払ってくれて、働けない間の生活費もくれる』
 
回答:ACCが病気の医療費を払ってくれるというのは完全な誤解です。ACCが対象にしているのはケガだけで、病気は含まれません。病気で働けなくなったときの生活費は諸条件を満たせば、ワーク&インカムから支給され、ACCとは無関係です。
 
質問:『ACCは日本の健康保険のようなものですか?』
都市伝説:『はい、そうです』
 
回答:これも完全な誤解です。ACCはACCレビーと呼ばれる一種の税金を徴収しているので、「これが日本の健康保険料の代わり」と思っている人が非常に多いようです。日本の健康保険は世帯所得と世帯人数を基に徴収され、4人家族で妻は専業主婦、子供2人という「モデル」世帯の場合、収入が500万円であれば、年間保険料は全国平均で約40万円といわれています。
 
年間40万円ということはNZドルで考えると、月間約400ドル、週100ドルです。ACCレビーは職業によって設定額が変わりますが、普通の勤め人でこんなに高額のレビーを払っている人がいるでしょうか?これでは私がご案内している医療保険の保険料より高額になってしまいます(笑)。
 
 この差が病気やケガだけでなく歯科治療も対象にし、さらに3割の自己負担がある日本の健康保険と、ケガだけを対象にして自己負担のないACCとの違いです。周りをみてもおわかりのように、ケガをする人よりも病気になる人のほうが圧倒的に多く、ACCはなる確率の低いケガのみを対象にしています。
 
質問:『療養中の生活の面倒もみてくれるなら、ACCは生活保護でもある?』
都市伝説:『ACCは生活保護ではないけれど、病気のときは生活費が支給される』
 
回答:これも大きな誤解です。ACCが生活費を支払うのは交通事故で働けなくなった場合など、ケガに関するもののみです。病気で働けなくなったときの生活費は最初の質問の回答の中で述べたように、ワーク&インカムから支給されます。金額は既婚者で週171ドル、25歳以上の単身者で週206ドルです。ただし、「週15時間以上働くことができない」ことが条件になるので、「退職したくない」「少しなら働ける」と、仕事量を減らしても週15時間以上働いていたら手当の対象になりません。
 
 多くの皆さんがワーク&インカムというと、「失業者とか障害者とか、片親世帯を対象にする生活保護では?」と思っているようですが、ケガ以外で生活費をもらうとなったらすべてワーク&ワイカムです。
 
 特に今年の7月15日から制度が変わり、それまでの「失業手当」、病気で働けなくなったときの「疾病手当」、一人親の「家事目的(ドメスティックパーパス)手当」などが「求職者(ジョブシーカー)手当」に一本化されたので、生活保護を受ける理由は違っても、国の扱いや条件は同じになりました。詳しくはリンク先をご参照下さい。
 
第242回  病気で働けなくなったらどうなる?
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=242
 
 これで「病気とACCはまったく無関係」というのがおわかりいただけたでしょうか?上の質問のすべてで勘違いをしている人もいれば、一つか二つを誤解している人もいます。全体で見ると、今までお話してきた約4割の日本人が『病気になってもACCがあるから大丈夫!』と思っていたので、今回詳しく書いてみました。都市伝説はまだまだあるので、次回も続けます。

 

高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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