【商業ビルに厳しい耐震対策を導入】
前回は4月から保険業界を挙げて、住宅保険を大幅に見直す話をしました。(詳しくはリンクをご参照)抜本的な変更で保険料の大きな値上げは避けられない情勢ですが、クライストチャーチ地震を経て、NZでの地震リスクが大きく見直された結果なので、残念ながらこの流れが変わることはないでしょう。地震リスクの見直しは商業ビルやマンションに対しては一段と厳格で、政府は現在、厳しい耐震対策の導入を検討しています。
第224回 4月から住宅保険が大幅に見直されます
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=224
【1976年以前に建てられたビルに焦点】
ビジネスイノベーション・雇用省は全国の全ての商業ビル、高層ビル、高層マンションに対して耐震検査を行うことを検討しています。対象となるビルは実に19万3,000棟だそうでピンと来ない話ですが、10年以内に中程度の地震に対する耐震構造にしない場合は取り壊すというのですから、ビジネスをしている人には聞き逃せない話でしょう。
【5年以内に査定、10年以内に工事か取り壊し】
現在提案されている手順は、関連法の改正が終了し次第、各自治体は5年以内に対象となるビルの査定をします。耐震工事が必要になったビルはその後10年以内に工事を終了するか取り壊すかの選択を迫られます。工事費用はビルのオーナーが全額負担しますが、賃貸料の大幅な値上げでテナントに一部が転嫁されるのは避けられないでしょう。
【テナントにとっても大問題】
オークランドではドミニオン・ロード、マウントイーデン、ポンソンビー、キングスランドなどに石造りの古い商業ビルが数多くあり、最近、ポンソンビーのシンボルでもある旧郵便局ビルが売りに出されて話題になりました。ドミニオン・ロードの商業組合は「ビルのオーナーがコスト負担を求めてきたら、テナントは負担できない」と表明しています。耐震工事はオーナーにとってもですが、出店しているテナントにも大問題なのです。
【工事中の営業停止や立ち退きも】
時間的には15年あるわけですが、実際は工事の負担を嫌ってビルを売却したり、自治体の査定前に工事をしてしまうなど、オーナーによってさまざまな動きがあります。すでにお客様の間からも「店の入っているビルが売りに出ている」とか「オーナーが耐震工事をすると言い出した」などのお話があり、この件に関してはすでに動きが出ています。
【1976年以前に建てられた建物に焦点】
耐震が必要かどうかの焦点となるのは1976年以前に建てられた建物です。ということはかなりのビルが対象になります。特に石造り、レンガ造りなどヒストリカルビルとして重厚で高級感のあるビルは、クライストチャーチでの被害が大きく、耐震工事の難易度も高いため、オーナーが費用を負担しきれないケースが続出するようです。不動産関係者の間ではこうした建物の歴史的価値よりも、安全が優先されるとみられています。
【出店や移転は慎重に】
すでにビジネスをしている場合はオーナーとまめに連絡を取り合い、対応が必要になった場合、オーナーが工事、売却、取り壊しのうちどの方法を取るつもりなのかをよく確認した上で、対応を検討することをお勧めします。売却する場合、新オーナーが取り壊しを予定している場合もあるので要注意です。工事をする場合も期間がどれぐらいになるのかも重要です。工事で営業ができなくなっても保険の対象にはなりませんのでご注意下さい。新規に出店する場合や移転を検討している場合は、こうした動きに留意してぜひ慎重に。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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