前回、「国が公共医療での待機手術の削減を検討」という報道の話をしました。待機手術とは緊急手術以外のあらかじめ日程を決めてする手術のことですが、NZの場合は病状や患者さんの体調を考えて日程を決めるのではなく、手術の順番が回って来るのをひたすら待って日程が決まるということをお伝えしました。
公立病院がパンク寸前と言われ続ける中、全ては患者数、予算、医療機関の収容能力で決まるのです。逆に言えば、病状が多少悪化しようが痛みが増そうが、順番が回ってこない限り、痛み止めなどが処方されても待機手術の順番が早まることはまずありません。
膝や耳の手術を待っているうちに、もう片方にも同じ症状が出て両方とも悪化。しかし回ってきた順番は最初に悪化した方のものなので、片方だけの手術が行われ、もう片方のために再び順番待ちというのもよく聞く話です。
自分や周囲が健康だとなかなかピンと来ない内容でしょう。大勢のキーウィも自分が当事者にならない限り、私たち同様にあまりピンと来ていないことが多いようです。公立病院は入院できると、素晴らしく看護が行き届いているところが多いので、心筋梗塞などで緊急手術を受けた場合は大変印象が良いのです。しかし、現実には手術のほとんどは待機手術です。
先週、お向かいさんが脚に白い物を巻いて庭を歩いていたのでどうしたのかと思って話に行ってみました。彼はまだ30代で子供も小さいのですが、静脈瘤の手術を受けたのだそうです。今月左脚の手術をして、来月に右脚の手術を受けるそうです。
彼の右脚にはところどころに、大きなコブのようなものがいくつも飛び出していました。この若さでこんなに大きな静脈瘤があるとは驚きました。手術をした左脚の方がもっと悪かったというのでさらに驚きました。
「足がつったり、むくんだり、最近では痺れも出てきて“これはまずい!”と心配していたところだったので、手術が受けられて良かったよ。」と彼は言っていましたが、手術が決まってからの待ち時間は驚くなかれ、10年だったそうです。その間に病状が悪化してしまうのは当然です。
思うに静脈瘤のような命にかかわらない手術は年間何件もしくは予算いくらと決まっていて、その枠に合わせて待機手術を順番に行っているのではないでしょうか。その結果が10年です。特に人口が増え続けるオークランドは毎年2万5000人ずつ増え、2030年には200万人都市になっていると言われますが、予算が人口に追いつかなければ待ち時間は長引くばかりです。
ちなみに医療保険があれば、加入後の期間や静脈瘤の範囲など条件がついても、静脈瘤の手術はほとんどの保険で対象になるはずです(条件が付かない保険会社もあります)。条件付きなのは「いつから症状が始まったか」が特定できないからです。他にも条件がなかったり、「加入後1年以降」など条件付きでも保険の対象になるものに、親知らずの処置があります。ご参考までに。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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