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第217回  国が公共医療での待機手術削減を検討 

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新年明けましておめでとうございます。
 年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。今年もコラムを通じて有用な情報をご提供できるようがんばっていく所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 さて、年明け早々の新聞記事に「国が公共医療での待機手術の予算削減を検討」というのがありました。あまり聞き慣れない待機手術とは、緊急手術以外の手術を指します。椎間板ヘルニアを患っている人が、「今は必要ないけれど、今度激しい痛みが出たら“手術”を検討する必要がありますね」と医者から言われたら、それが待機手術です。あらかじめ日程を決めてする手術のことで、ほとんどの手術がこれに相当します。
 
 本来、待機手術の「待機」は症状の進行に合わせた時期、患者さんの体調などを考慮して「適切なタイミングを待つ」という意味ですが、NZではその意味がかなり違います。ご存知のとおり、NZの公共医療はパンク寸前と言われ続け、人口の増加に体制が追いついていないのが実情です。そのためNZでの「待機」とは、「順番待ち」を指します。
 
 自分よりも症状の重い人がいればその人たちが優先され、自分は後回しになってしまいます。その結果、病状が大きく悪化すれば順位が上がるという皮肉な構造になっています。この話の身近な具体例は前にもしたのでリンクをご参考下さい。
第54回 ガンになったら来てください 
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=54
 
 リンクの中の医者の言葉にあるように、
「ガンであれば待ち時間の優先順位が上がるので、もう少し早く手術ができます。」
ということは、せっかく早期に問題を発見できても、制度上の問題で待たされ、その間に症状が悪化してしまう可能性が高く、実際その悪循環が恒常化しています。待ち時間の間にGPに差し戻され、一から順番待ちを繰り返す例もあります。
 
 なぜこうした状況にあるかというと、公共医療が無料で患者に自己負担がないため、国が定める予算以上の医療サービスを提供できないからです。順番待ちを避けたければ医療費を全額負担して私立病院に行くしかありませんが、医療保険がなければ大変な負担になります。
 
 今回の新聞記事によれば、待機手術の上位25項目に年間6億4,100万ドルが投じられているそうですが、国は今年度だけで、この部分を3,000万ドル削減することを検討しています。その間にも人口は増え続け、医療費そのもの(医薬品代、人件費、入院費など)も値上がりしています。予算として金額を固定してしまえば、内容の悪化は免れません。
 
 いざというときは保険を通じた民間医療と公共医療との二段構えでないと、自分の身を守れないという認識は身近な実例を通じて確実に広まっています。この話も具体例をすでに紹介しています。新年早々重い話になってしまいましたが、ご参考までに。
第205回  28歳のガン生還者
http://nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=205

 

高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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