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第127回  保険と地震 

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クライストチャーチの大地震で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
 余震が止み、1日も早く平常な状態に戻れるようお祈り致します。
 
 被害者が1人もなく、ライフラインの復旧も思ったより早く進んでいるようで、これだけは誰もが胸をなでおろしたと思います。チャーチの皆さん、しばらくご不便も多いでしょうが、ぜひがんばって乗り越えて下さい。
 
 今回の規模は1931年のネイピア大地震以来だそうで、そのせいかテレビでも「家が壊れた人はEQCに連絡を」と盛んに言っています。その辺の手順についてはキーウィでも100%理解しているわけではないようです。ここで改めて地震に関する保険についてお話します。
 
 まず、NZの住宅保険は火災や水漏れだけでなく、自然災害も広く対象にしているので地震もその対象になります。日本のように地震保険に別途加入する必要がなく、この国には地震保険というものはありません。
 
 火災や水漏れなどの被害は直接加入している保険会社に連絡をし、個別に処理します。この辺は自動車保険など他の損害保険と同じです。しかし、地震や水害など自然災害を原因とするものは、まず政府機関であるEQC(地震委員会)に連絡します。
 
「保険に入っているのにどうして政府機関に連絡するのか?」と思われるでしょうが、これがNZの制度であり、どの保険会社の住宅保険に入っていても同じです。保険加入者が払う保険料にはEQCの費用も含まれており、EQCはそれを元に運営されています。言ってみれば、EQCは住宅保険の再保険会社の役割を担っているのです。
 
 そのため被害を受けた場合は真っ先にEQCに連絡を入れ(トールフリー;0800-damage,0800-326243)、住所、氏名、被害状況などとともに加入している保険会社と保険証券番号(ポリシーナンバー)を伝えてください。EQCはクレームを基に被害を査定します。今回の地震でも執筆時で2000件近い報告がEQCに寄せられています。
 
 では、保険はどこで役に立つのでしょう? 決定的なことは、保険に加入していない場合はEQCの対象にならないことです。保険加入者の保険料で運営されている機関ですから非加入者は対象にしません。
 
 次に、EQCの補償額には上限があり、それを越えた分は保険会社が補償します。EQCの上限額は住宅で10万ドルです。家が損壊して住めなくなった場合、10万ドルで一から建て直すことはできないので、10万ドル以上の分を保険でカバーして建て替えます。このように、住宅保険の補償はEQCの部分と保険会社の部分から成り立っています。
 
 ただし、これは住宅に限った話で、オフィスや店舗が自然災害に遭った時は、これに対応するビジネス保険に加入している場合は、保険会社に直接ご連絡下さい。ビジネスはEQCの対象になりません。
 
 自然災害による家財への損害もEQCの対象です。この場合、家財保険(コンテンツ保険)に加入していることを条件に、上限2万ドルまでがEQCで補償され、住宅同様、不足分は保険会社が補償します。今回の地震で家には問題がなくても、家具や家電など家の中の物に被害があった場合はEQCに連絡して下さい。なお、地震が理由であっても、車の被害はフルカバーの自動車保険でのみ補償され、保険金請求の窓口はEQCではなく保険会社になります。
 
 あまり知られていないことですが、EQCには保険同様、免責(補償額の一部自己負担)があります。住宅の場合は最低を200ドルに補償額の1%(上限の10万ドルであれば1000ドル)がかかり、家財は一律200ドルです。被害に遭って困っているときに、これで何万ドルも補償されるのであれば助かると思います。
 
 住宅保険と自然災害の話はこれまでもしているので、詳しくはリンクを参照下さい。
第92回 万が一のときの住宅保険と家財保険-住宅、家財保険編
http://nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=92
第8回 自宅が災害に遭ったら-住宅保険編
http://nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=8

 

高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)

アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。

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