前回からの続きです。念のため、もう一度ご質問を確認しましょう。
『質問2』:生命保険について調べています。日本の生命保険とはどういった点が違うのか、気をつけておくべきこと、生まれつき病気がある場合にはどうなるのかといった点を知りたいのですが・・・。(Yさん)
『回答』:ご質問を以下のように3つに分けて、回答してみます。
(1)NZと日本の生命保険の違い
(2)生命保険加入に際して気をつけておくべきこと
(3)生まれつきの病気がある場合の加入
その中で、重要性の高い(2)からご説明を始め、前回は保険料や死亡保険金に発生する為替を取り上げました。保険金は金額が大きいだけに、為替は見逃せない問題です。
というのも、ニュージーランド・ドルは円のような世界の基軸通貨ではないため、数年単位で大きな変動を繰り返しています。その変動幅も、対米ドルでの円相場などでは考えられないほど大きなものです。
具体的なNZドルの対円レートを挙げてみましょう。96年には「1NZドル=87円」という大変なドル高円安でした。信じがたいくらいですが、今よりドル高でした。ところが2000年には「1NZドル=43円」まで下がり、急激なドル安円高になりました。今度はそこから反転し、今は80円まで戻してきています。
つまり10年間で、NZドルの対円での価値は半分になったり、倍になったりを繰り返しているのです。日本円で考えれば、対米ドルで100円になったり200円になったりしているわけで、なかなか実感が湧かないことでしょう。これがNZドルの現実です。
生命保険の死亡保険金となると、かなりまとまった金額ですから、為替変動による受取金額の違いにはぜひとも注意が必要です。前回説明しかけた具体例の続きを見てみます。
2000年に日本で3千万円の生命保険に加入
為替レート ⇒ 1NZドル=43円
NZドル換算での死亡保険金 ⇒ 約70万ドル
2005年に不幸にも被保険者死亡、3千万円の保険金の受け取り
為替レート ⇒ 1NZドル=80円
NZドル換算での死亡保険金 ⇒ 約38万ドル
70万ドルの見込みが5年間でたったの38万ドルと約半額になってしまいました。これでは「住宅ローンを返済したら、いくらも残らない」と、いうことになりかねません。
保険とは関係のない為替のせいで、受取金額がこんなにも変わってしまうのです。半分にもなれば倍にもなるので、70万ドルが140万ドルになる可能性もあるかもしれませんが、そうなるには1NZドルが約20円、今の4分の1の価値にならなければならず、可能性としては相当低そうです。
もうおわかりでしょう。海外で暮らしている場合、保険金をどの通貨で受け取り、どこで使うかが非常に重要になってきます。予期せぬ不幸にいつ見舞われるかがわからない以上、不要な為替リスクにさらされないことは、せっかくかけた保険を最大限に活かし、残されたご家族を守ることになります。次回は目的別により具体的な例を見てみます。
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高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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