前回はニュージーランドの医療費無料化の現状の一部をお話しました。構想どおりであれば素晴らしい制度ですが、実際は医療施設、医者や医療技術者不足で、無料医療を受けるために、大勢の患者が大変な待ち時間を強いられています。
「三大疾病」(がん・心筋梗塞・脳卒中)は日本人の死亡原因の6割を占め、心筋梗塞と脳卒中は減少傾向にあるものの、がんだけは増え続けています。ニュージーランドでも状況は全く同様で、男女ともに「三大疾病」が死因の6割に達しています。特にがんによる死亡は男性で3人に1人、女性で4人に1人と、ここは相当の「がん大国」です。
そのため、がんはニュージーランドに住む日本人にとり、最も気になる病と言ってもいいでしょう。今回はその治療の現状の一部を見てみましょう。今年に入って報じられた内容によると、ニュージーランドではがん治療に欠かせない放射線療法士が大変不足しています。
放射線治療の許容できる遅れは、国家の規定で「最長4週間」と定められているにもかかわらず、多くのがん患者がオークランドで14週間、ウェリントンでは去年の17週間からやや改善して、現時点では8週間待たされているのが実情だそうです。深刻な遅れを穴埋めするために、政府はどうしているかご存知ですか?
国費でオーストラリアの私立病院に患者を送り込んでいるのです! その数は2000年以来200人以上に達し、さらに多くの患者がオーストラリア行きを待っています。半分以上がオークランド市立病院の患者で、人口が多い分、オークランドの問題は深刻です。
オーストラリア行きを選択した8割が乳がんの女性患者、2割が前立腺がんの男性患者です。この方法が導入された当初、ほとんどの男性は行きたがらなかったそうですが、今ではますます多くの人がオーストラリア行きを選択しているそうです。がんという生死にかかわる病を抱え、待ち時間に対する患者の我慢も限界なのでしょう。
なんだか意気消沈しそうな内容ですが、これが無料医療の現状の一部です。医療保険があれば国に頼らず、医療費負担を気にせずにさっさと私立病院へ行くという選択肢ができます。永住者の場合、ご家族やお仕事など、生活の基盤がここにあるため、「いざとなったら日本に帰ればいい」とは言えない方が、ほとんどではないかと思います。ご自分の身を守り、ご家族への負担を最小限にし、ここでの生活をつつがなく続けていくためにも、永住者の医療保険は欠かせないものだと思っています。次回は、具体的な医療保険選びについてお話します。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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