インバーカーギルのマイケル・キングポティキさんが、孫に本を読み聞かせたいという夢を実現するために文字の読み書きを学び始めたのは、50代の後半だった。
40年間のファーマーとしてのキャリアで、マイケルさんは自分が文盲であることを隠すために、「今日は眼鏡を忘れてしまって...」という小さな嘘をついてきた。
「恥ずかしかったのです。もし私が読み書きができないことが知れたら、クビになったり、仕事が来なくなるかもしれないとも感じていました」とマイケルさん。
妻のマーガレットにファーム運営に必要な書類作成を頼むかたわら、彼は自分の中の劣等感と格闘していた。
「でも妻が孫たちに本を読み聞かせていたのを見て、『いつか私もやってみたい』と強く感じました。そして、『遅すぎることはない』と自分に言い聞かせたのです」
マイケルさんを教えたのは、引退した教師のリンダ・デイビスさん。Rural Youth and Adult Literacy Trustのボランティアをしている。
「マイケルはとてもシャイでしたが、とにかく一生懸命でした。実際文字が読めないのに、運転免許証を取ることなどは、ものすごく頭がよくなくてはできないことです」とリンダさん。
マイケルさんがオートバイとクルマの免許証を取ったときは、兄に毎晩一年間道路交通法規を読んでもらったそうだ。
文字を習得したマイケルさんは『A Journey Towards Literacy』(読み書きへの旅)という本を出版した。その中で彼は、何かを学ぶことに遅すぎることはない、とメッセージを発している。
写真入りの自費出版の本書には、文字の読み書きができるようになるまでの経緯とともに、南の最果てで育った少年時代、家族のこと、父親との関係などが綴られている。