【オークランドの大停電】
先週の今頃はオークランドの大停電で大変な思いをしましたが、すでに平常に戻り電気のありがたさを噛みしめています。経験した皆さんも、多分同じ思いではないかと思います。数時間ならまだしも、丸1、2日、場所によっては3日目突入となると、きついですよね。対象になってしまったエリアの皆さん、お疲れさまでした。
 
【停電をカバーする保険？】
　「停電で営業できなかったんですが、これって保険でカバーされますか？」
「冷蔵庫や冷蔵庫の中身が使えなくなったんですが、保険の対象ですか？」
「停電をカバーするにはどんな保険に入っておけばいいんですか？」
停電を経て、こういうお問い合わせを何回か受けました。停電は地震のような自然災害ではないので、「停電をカバーする保険」という特別なものはありません。しかし、他の保険で停電による被害をカバーできる場合があります。
 
【ビジネスインタラプション：失った収入を補償する保険】
カタカナ表記で長くなりますが、日本語に訳すと逆にどの保険なのかかわかりにくくなってしまうので、英語で呼ばれている表記のまま書いてみます。ビジネス保険の中にはビジネスインタラプション保険というものがあります。基本的に何らかの不可抗力で営業できず、それによって失った収入を補償する保険です。個人で言えば病気やケガで働けなくなった場合の所得補償保険に相当します。
 
【クライストチャーチ地震で最も注目されたビジネス保険】
ビジネスインタラプションはクライストチャーチ地震で最も注目されたビジネス保険とも言えるでしょう。レッドゾーンで営業していたために店舗やオフィスを失った被災企業のうち、この保険に加入していたことで、地震後も年単位の収入が補償され（補償内容は加入条件によります）、事業を停止していながらも従業員の雇用を続け、新しい店舗や事務所をじっくり探すことができたとして注目されました。
 
【補償内容は条件次第】
ビジネスインタラプションは通常2日間以上営業ができなかった場合に適用されるので、クライストチャーチ地震のように営業停止が長期にわたる場合は大変心強いです。ただし、今回のように2日以内に停電が収束した場合は対象になりません。また、個人の所得補償保険同様に、保険料が比較的高い保険でもあります。
 
【マテリアルダメージ：損害を受けたものを補償する保険】
ビジネス保険の中にはマテリアルダメージ保険というのもがあります。これは基本的に、何らかの不可抗力で事業を続けていくために必要なものが損害を受けて営業に支障が出たときの保険です。よくある請求は火事や泥棒で、商品・在庫・備品が使えなくなったり盗まれた、内外装、キッチンやレジ、事務所に支障が出て営業できないといった状況が典型例です。クライストチャーチ地震のときもいろいろな請求がありました。
 
【冷蔵庫の中身は？】
今回の停電で言えば、飲食店で冷蔵庫や冷凍庫の中身がだめになり使えなくなった場合、まずマテリアルダメージの対象になるでしょう。損害保険の請求には必ず免責（自己負担）があるので、免責額を超える損失が出た場合は請求できます。
 
【ビジネス保険はテーラーメイド】
　ビジネス保険は出来合いの保険というものがなく全てテーラーメイドです。ここでお話した内容はあくまでも一般論で、全ては個々の保険の加入条件によります。そのため、停電で同じような被害を受け、同じ保険会社を使っていても、「うちは保険がおりたけれど、あの店はおりなかった」という事態もありえます。
 
【保険を見直すチャンス】
ビジネスを購入したときに前の事業主が加入していた保険を引き継いでいる場合、自分がどんな保険に入っているのか良くご存知ないまま、保険料を払っている事業主の方もけっこういらっしゃいます。
「毎日忙しくて、保険のことまで考えている時間がなくて」
というお話もよく聞きますが、今回の停電を機に本当に必要な保険に入っているのか、いざというときに補償は過不足ないのか、改めて見直してみてはいかがでしょうか？