今年もあと2ヵ月となりました。毎年この時期になると保険会社のセミナーがぐんと増えます。私が取引している保険会社は全部で7社で、お誘いの数もけっこうな回数になりますが、行けばためになる話が聞けるので、なるべく足を運ぶようにしています。
さて、先日もある生命保険会社の勉強会があり、その中で「死亡保障の年代別請求理由」の話がありました。生命保険の被保険者がお亡くなりになったとき、残されたご家族などが保険金請求をするわけですが、その時にどういう死亡理由で保険金請求がなされたかということです。
その保険会社の場合、20、30代の理由のトップは「事故死」で、ほとんどが交通事故死だったそうです。それが40代以降になると、一気に「ガン」がトップになります。この変化は個人的にちょっと衝撃でした。40代からの健康管理がいかに大切かということをつくづく感じました。
一方で30代までに医療保険に入っていれば、既往症(保険加入以前に発症していた疾病や症状、検査によって疑いを指摘されていたものなど)がほとんどなく、40代以降にガンなど大きな病気を発症しても保険の対象になる、ともいえるかと思います。20、30代は若さで一気に駆け抜けられても、40代以降はなかなかそうはいかないのが現実のようです。
医療保険でも実例の紹介がありました。ある事業主のキーウィの男性がランニングのときに、たまに胸に痛みを感じるのが気になりGPにかかりました。心臓を超音波で検査する心エコーを受けても何も見つかりませんでしたが、血管造影の結果、冠動脈狭窄とわかり、すぐに心臓カテーテル治療(細くなっている血管に管を入れて広げる治療法)が必要と診断されました。
男性が感じていた胸の痛みは狭心症のサインでした。悪化して血管が詰まってしまえば心筋梗塞になるところでした。男性の場合、3ヵ月で3、4回痛みを感じていたそうで、気が付かないか気にしなければ、見過ごしてしまうところだったでしょう。
この男性は過去15年間医療保険に入っていて、平均で年間800ドル、合計1万2,000ドルの保険料を払ってきましたが、検査や治療で保険会社が支払った保険金は2万5,000ドルだったそうです。「商売に資金をつぎ込んでいたので、2万5,000ドルも貯金がなかった」と、男性は保険のありがたみを語っていました。
それよりも私が驚いたのは、この男性は無料の公共医療制度の利用も考え、ノースショア病院に問い合わせたところ、「カテーテル治療なら18ヶ月待ちになるでしょう」と言われたことです。自分の心臓の血管が詰まりかけているのがわかっていながら、1年半も待つ不安とはどれほどでしょうか。
それを聞いて男性は迷わず保険を使い、病名がわかってから数日後に私立病院で手術を受け、医者の所見を添えて保険請求をした翌日には保険金がおりたそうです。(このスピードはすごいと思います)
男性は医療保険以外に、NZではトラウマ保険と呼ばれる特定疾病保障保険(ガン・心筋梗塞・脳卒中を中心に、実際は30数種類の病気をカバーする保険)にも入っていたので、仕事ができない間の収入もこれでカバーされ、今ではすっかり元気になったそうです。
「NZは医療が無料だから医療保険は必要ない」という意見もありますが、必要のないはずの保険がなぜ存在して、年々加入者を増やしているのかは、この男性の例からもおわかりかと思います。無料制度なので、「金を払うから待ち時間を短くしてほしい」という選択肢がありません。待ち時間が早まる唯一の可能性は今のところ、「病気の悪化」だけです。
これに似た話は以前も取り上げたので、ご興味があればリンク先をご参考下さい。
第54回 ガンになったら来てください
http://www.nzdaisuki.com/column_insurance/detail.php?issue=54
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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