仕事仲間と話していると、「嬉しいことがあったんだよ」と体験談を話してくれました。
彼の長年の顧客にキーウィの女性がいます。数年前に思うところがあって、彼女の医療保険をA社からB社に切り替えるようアドバイスしたそうです。A社も彼が勧めたものだったのですが、女性は話を聞いて納得した上で、B社に変えることにしました。
この場合、もしもA社に加入してから病気になったり、検査を受けるようなことがあったら、新たに入り直すB社ではそれら全てが既往症(保険加入以前に発症もしくは治療していた病気や症状など)と見なされ、通常は保険の対象になりません。
そのため、女性が健康であることは保険会社を変える絶対条件でした。彼女の健康状態は良好で、B社に変えることになんら問題はありませんでした。
しかし、保険会社を変えて3年後に女性は乳ガンになってしまいました。大変な闘病が始まり、何度も化学療法(ケモセラピー)を受けました。乳ガンの化学療法の費用は平均4万ドルと言われていますが、この女性の場合は化学療法だけで10万ドルもかかってしまったそうです。(化学療法の費用は部位、大きさ、期間、使用する薬などによってまちまちです)
A社の医療保険では、化学療法に支払われる保険金が1コースにつき2万5,000ドルで、年間上限6万ドルでした。乳ガンの化学療法の場合、3ヶ月から長くて9ヶ月におよぶ可能性があります。女性がA社での加入を続けていたら、化学療法だけで4万ドル、それ以外にも放射線治療費が持ち出しになっているところでした。
持ち出しを避けるために、治療の途中から無料の公共医療に切り替えることもできます。しかし、今度は長い順番待ちに直面するので、せっかく治療が順調にきていても、その後の治療は間隔が空いてしまうことを覚悟しなければなりません。
その点、B社は入院治療保障の中でガン治療の費用に対応しており、その年間上限を20万ドルに定めています。ガン治療は入院を伴うこともあるので、化学療法、放射線治療にかかわらずこの対象になります。そのため、女性の乳ガン治療費は全て保険でおりたそうです。
全てを投げ打ってでも闘病に専念したいときに、治療費や順番待ちのを心配しなくていいというのは、どんなにか心強いことでしょう。仕事仲間が「嬉しいことがあった」と言うのも同業としてよくわります。ガンは避けられなくても、その対応には選択肢があります。
では、みんなB社の保険に加入すればいいように思われますが、B社の場合、20代後半から50代前半の女性は男性やA社よりも保険料が高めに設定されています。加入時は皆さん健康に問題がないので、つい安いA社を選ぶことが多いのです。しかし、B社の価格差はこの年代の女性の保険金請求の現状を反映したもので、この間は男性よりも女性の方が統計的に婦人科系疾患によって入院や手術を伴う病気になりやすく、実際に保険金請求が多いのです。
すでに保険に入っている人にきちんとした理由があっても、ほんの少しとはいえ高い保険を勧めるということは、思うほど容易ではありません。しかし、この話でもわかるとおり、加入から何年も経つうちに加入の選択基準が、「保険料」から「保障内容」へと変わってくることもありえます。
医療保険に加入していても、その保障内容まで詳しくわかっているケースはあまり多くありません。皆さんもこの機会に、ぜひ一度保険の内容を再確認されてはいかがでしょうか。
高橋靖宏【たかはし・やすひろ】
Financial Adviser (FSP68982)
アクセレレイト・コンサルティング社所属。海外進出企業の医療及びセキュリティ・リスク・マネジメントのスペシャリストとして、海外で長らくアシスタンス会社に勤務。NZで初の日本人公認ファイナンシャル・アドバイザーとして、生命保険、医療保険、損害保険など各種保険商品とキウイセーバーを日本語でご提供しています。
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